人工知能をめぐる動向–E資格の勉強前に知っておきたいこと

人工知能をめぐる動向–E資格の勉強前に知っておきたいこと

人工知能の発達に伴って、より多様な分野で人工知能が利用されるようになっています。深層学習や知識表現など、これまでの人工知能では不可能であった高度な技術も実現しています。E資格を取得するためには、こうした人工知能に関する最新のニュースを知っておくことも不可欠なことから、ここではE資格受験に役立つ、人工知能をめぐる最新の動向について詳しく紹介します。

向上し続けている人工知能の能力

人工知能の開発は2010年代に入って、システムの開発環境が整ったことにより、さらに大きく前進しました。人工知能に関するニュースとして多くの人を驚かせたのが、人工知能を搭載したコンピュータが、クイズ番組で人間の解答者に勝利した出来事です。このニュースが画期的だったのは、数字の計算など、従来は単純な処理に多く利用されてきた人工知能が、人間の脳に近いより複雑な処理をできるようになったことがわかったからです。クイズで使用されたのはIBMが開発したワトソンという質疑応答システムです。コンピュータがクイズに解答するために必要になるのは、これまで以上に高度な人工知能の能力です。問題文を分析して、何が問われているのかということを判断できる能力が必要であり、それに対して正しい解答ができるための大量の知識も必要になります。

IBMが質疑応答システムを開発するためにしたこと

この難問に対処するためにIBMは、2880個のマイクロプロセッサを使用した人工知能システムを開発しました。クイズに答えることができるように、2億ページに及ぶテキストデータも、一緒に取り込んでいます。これは100万冊の書籍に相当する知識量で、人間一人の記憶力をはるかに上回るものです。2011年の2月に開催された人間とのクイズ勝負は2日間かけて行われ、初日は引き分けだったものの、2日間総合ではワトソンが勝利し、人類の歴史で初めて、コンピュータが人間にクイズ勝負で勝ちました。これは人工知能の発展にとって非常に大きな意味のある出来事で、これまで単純な計算作業しかできなかったコンピュータが、より高度な知識表現をできるようになるかもしれないという可能性を広げました。ワトソンはその後も能力の開発が進められ、料理のレシピを自分で考えることができる機能も獲得しました。これは、世界各国の料理のレシピや、食品の特徴や組み合わせなどを分析して独自のレシピを作る優れた機能です。嗜好性に関するデータも分析することで、心理的な要素も考慮したレシピの作成が可能になりました。

日本で開発された東ロボくん

日本でも2013年に、コンピュータが与えられた問題に解答する能力に関する実験が行われました。実験に使用されたのは東ロボくんというコンピュータで、富士通研究所の研究チームと国立情報学研究所が共同で開発した機械です。東ロボくんが解答したのは東京大学の入学試験で、センター試験と東大の2次試験をそれぞれ解答しました。問題の解答に必要な数学の計算や単語の分析は、解答用のプログラムを作成することで対応しています。試験の結果から、人工知能を搭載したコンピュータには、私立大学に入学できる程度の能力があることがわかりました。

自動運転は人工知能を応用している

人工知能を応用した技術として研究が進められているのが、機械の自動運転です。特に大きなニュースになっているのが、人工知能を搭載したコンピュータによる自動車の自動運転です。自動運転に関する研究は世界各国で行われていて、国連の自動車基準調和世界フォーラムでは、自動運転に関する国際的な基準の作成が進められています。日本でも古くから自動運転に関する研究は実施されていて、1980年代には早くも車線を認識するシステムが開発されていました。その後、国外でも自動運転に関する研究が盛んに行われるようになったために、2012年から、国土交通省で自動運転システムに関する検討会が開催されるようになりました。日本国内で自動運転によるサービスが初めて行われたのは2019年11月のことで、秋田県上小阿仁村で行われているこのサービスでは、最大で7人の乗客を乗せることができる電動式のカートが使用されています。カートは、路面の下に埋められている電磁誘導線の上を移動しながら、自動で運転を行っています。

人工知能の応用事例として注目されているもう一つのニュースが、深層学習システムの開発です。これは人工知能の能力の中でも特に、コンピュータの学習能力の向上に大きく関係するシステムで、2015年にアメリカの会社が開発した囲碁のプログラムがプロの囲碁棋士に勝利したことで、広く注目されるようになりました。2016年には上記のプログラムを開発したDeepMind社が、ディファレンシャブル・ニューラル・コンピューターという人工知能の技術を開発しました。これは、コンピュータが入力された情報相互の関連を分析して、仮説に類似したものを自分で作ることができる画期的なシステムです。

さまざまな分野で応用されている人工知能

人工知能の技術の発展により、2010年代に入ってからより多様な分野に、人工知能の技術が利用されるようになっています。人工知能に関する大きな話題として世間を驚かせたのが、人工知能を搭載したコンピュータが、クイズ番組で人間に勝利したニュースです。自動車の自動運転のための研究も進められていて、深層学習システムの開発により、人工知能の学習能力も大幅に向上しています。