AWS(Amazon Web Services)は、クラウドコンピューティングの分野でもとくに代表的な存在であり、多くの企業がその技術を採用しています。初心者でもAWSの知識を深めるために適した資格が用意されていますが、どの資格が最初のステップとして最適なのかわからない方も多いでしょう。
今回の記事ではクラウド初心者がAWSの世界に足を踏み入れるためにどの資格を選ぶべきか、また合格するための効果的な学習方法について詳しく紹介します。
初心者向けのAWS資格はある?
AWS資格で検索しても英語のものが多く、初心者の方は敷居が高いと感じてしまうことも多いでしょう。しかし結論、初心者向けのAWS資格は複数存在します。
後にも詳しく後述しますが、たとえばAWS資格の種類のひとつで、もっとも難易度が低いとされている「AWS Certified Cloud Practitioner (AWSクラウドプラクティショナー)」は、AWSの基本的なサービスや概念についての知識を確認するもので、AWSの専門知識を必要としない初心者でも受験が可能です。
AWSクラウドの基本的な仕組み、サービスの概要、セキュリティ、料金体系、サポートのオプションについて学べる内容となっており、ITの初心者やAWSを使ったことがない方でも挑戦しやすい資格です。この資格を取得することでAWSの基本的な理解を深めることができ、AWSソリューションアーキテクトやAWSデベロッパーといった、より高度なAWS認定資格を目指すための基盤となるでしょう。
試験は90分で選択式と記述式の質問が含まれています。クラウドの基礎を学び、今後のキャリアに活かしたいと考えている方に最適な資格です。その他にも初心者向けのAWS資格は複数あり、以下で後述しています。
AWSの試験についての概要を詳しく知りたい方は以下の記事が参考になるので、ぜひご一読ください。
AWS資格の種類
AWSの資格は、全部で10種類あります。一覧表にまとめると、以下のようになります。
レベル | 名称 | 難易度 | おおよその勉強時間 |
FOUNDATIONAL | Cloud Practitioner | ★☆☆☆☆ | 約20〜50時間程度 |
ASSOCIATE | SysOps Administrator | ★★☆☆☆ | 約40〜60時間程度 |
ASSOCIATE | Developer | ★★★☆☆ | 約50〜60時間程度 |
ASSOCIATE | Solutions Architect (Associate) |
★★★☆☆ | 約50〜60時間程度 |
ASSOCIATE | Data Engineer | ★★★☆☆ | 約50〜60時間程度 |
PROFESSIONAL | Solutions Architect (Professional) |
★★★★☆ | 約80〜100時間程度 |
PROFESSIONAL | DevOps Engineer | ★★★★☆ | 約80〜100時間程度 |
SPECIALTY | Advanced Networking | ★★★★☆ | 約100〜120時間程度 |
SPECIALTY | Security | ★★★★★ | 約100〜120時間程度 |
SPECIALTY | Machine Learning | ★★★★★ | 約100〜120時間程度 |
「レベル」の列は難易度順に並んでおり、FOUNDATIONALがもっとも難易度が低く、SPECIALTYがもっとも難易度が高いです。勉強時間もFOUNDATIONALとSPECIALTYでは、おおよそ100時間ほどの開きがあります。
ただ勉強時間に関してはあくまで参考ですので、事前知識や経験の有無、個々の学習方法やモチベーションでも大きく前後します。まったくの未経験かつ初心者がこれから取得を目指すなら、ASSOCIATEレベルが狙い目といえるでしょう。
ASSOCIATEレベルはAWSの基本的なサービスやアーキテクチャに関する知識が求められる、クラウド環境での実務経験がある人向けの中級レベルの認定資格となっています。クラウドソリューションの設計やデプロイ、運用に関する能力があることが証明できるため、未経験からの転職およびキャリアアップを目指すのであれば、ぜひ挑戦したいレベルです。
初心者に向いているおすすめAWS資格3つ
上記で紹介した数あるAWS資格の中でも、とくに初心者に向いているおすすめAWS資格を挙げるなら、ASSOCIATEレベルの以下3つとなります。
- Developer
- Solutions Architect(Associate)
- Data Engineer
それぞれ順を追ってご紹介します。
初心者向けAWS資格①Developer
初心者に向いたおすすめ資格1つ目は「Developer」で、こちらはクラウドベースのアプリケーション開発に興味がある初心者に最適です。この資格は、AWSでアプリケーションを構築し、運用するための基本的な知識とスキルを証明するのに役立ちます。
具体的にはAWSサービスの活用、基本的なセキュリティ対策、APIの使用、クラウドベースのアプリケーションのデプロイやデバッグに関する理解が求められます。プログラミング経験があるとなお有利にはなるもの、資格取得のために特別な前提条件はありません。
AWSの開発者向けサービスに特化した学習内容が含まれることから、AWSの基本を学びながらクラウドアプリケーション開発の基礎をしっかりと固めたい方にも最適です。クラウドコンピューティングにおける開発スキルを磨きたいエンジニアや、開発チームの一員としてAWSを活用したい方におすすめです。
初心者向けAWS資格②Solutions Architect(Associate)
初心者向けのAWS資格2つ目は、Solutions Architect(Associate)です。こちらはAWS初学者およびAWSクラウドやオンプレミスITの知見がある方に最適な資格で、コストとパフォーマンスに最適化されたソリューションの設計能力を評価します。
130分間の試験で65個の問題に答える形式となっており、試験はPearson VUEテストセンターまたはオンライン監督付きで受験可能です。試験は英語や日本語を含む複数の言語で提供されています。
コーディングの深い実務経験は不要ではあるものの、基本的なプログラミングの知識があればなお有利になります。初心者でも十分に取り組める内容となっており、AWSの経験が浅い方でも挑戦しやすいでしょう。
クラウドコンピューティングの基礎知識を持つITプロフェッショナルや、これからクラウドインフラの設計や運用に携わりたいと考えている方にも適しています。
初心者向けAWS資格③Data Engineer
初心者向けのAWS資格3つ目は「Data Engineer」で、こちらは主にデータ関連のAWSサービスに関する知識とスキルを検証するもので、データ分析やビッグデータ処理に興味がある初心者におすすめの資格です。
試験は65問の問題で構成されており、制限時間は130分です。データの取り込みや変換、データパイプラインのオーケストレーション、データモデルの設計、データライフサイクルの管理、そしてデータ品質の確保に関するスキルが求められます。
クラウドベースのデータソリューションに関心がある人や、データエンジニアリングの基礎を学びたい初心者に適しています。なお、おすすめのAWS資格については以下の記事も参考になるので、ぜひ併せてお読みください。
初心者がAWS資格に合格するための方法
この章では、初心者がAWS資格に合格するための方法として、以下の2つを紹介します。
- 書籍やインターネットの情報で独学
- IT講座およびセミナーを活用
初心者のAWS合格法①書籍やインターネットの情報で独学
初心者がAWS資格に合格するためには、まず書籍やインターネットの情報を活用して独学する方法が挙げられます。AWS関連の基礎知識を学べる書籍を選び、自分のペースで基礎から段階的に学習を進めます。
またインターネット上には無料や有料の学習リソースが豊富にあるので、信頼できる最新の情報を収集し、模擬試験や実践問題を解くことで理解を深めることが重要です。
独学であれば自分のペースで学べるため、忙しい人でも計画的に進められます。一方でどうしても理解できない不明点があった場合、モチベーションを維持するのが難しいというデメリットもあります。
初心者のAWS合格法②IT講座およびセミナーを活用
初心者がAWS資格に合格するための方法として、IT講座やセミナーを活用するのはたいへん有効です。IT講座およびセミナーは専門的な知識を持つ講師から直接指導を受けられるため、独学では得られにくい実践的なスキルを短期間で習得できるからです。
とくに模擬試験や演習問題を通じて試験対策を徹底できる点が大きなメリットです。また講座やセミナーでは最新のAWSサービスや実際のビジネスでの活用事例に触れることができ、より実務に即した知識を身につけることが可能になります。
費用はかかりますが、独学に比べて圧倒的に効率的な学習ができるため、合格への近道となります。
AWSで始めるインフラ構築基礎セミナーは、AWS未経験者でも2日間でインフラ構築の基礎から応用までを習得できる短期集中講座です。クラウドの基本知識、Webサーバー構築、ネットワーク設定から、アプリケーション開発環境の構築、ChatGPTの実装、サーバーの冗長化まで実践的な内容が含まれています。
料金は38,500円(税込)で、実務で即活用できるスキルを学べるため、短期間で効率的に学びたい方に最適です。
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AWS資格に関して気を付けたい点
AWS資格に関して気を付けたい点は、主に以下の2つです。
- 3年に一度更新しないと失効する
- 2024年から受験料が値上げしている
それぞれ紹介します。
気を付けたい点①3年に一度更新しないと失効する
AWS資格は、いずれも取得後も3年に一度更新が必要です。目まぐるしい技術の進化に対応するために重要とされているからです。
AWSのクラウドサービスは頻繁にアップデートされ、新しい機能やサービスが追加されるため、資格の保持者もこれらの変化に対応する必要があります。更新試験を受けることで最新の知識とスキルを保持し、AWSの進化に遅れずについていくことができます。
気を付けたい点②2024年から受験料が値上げしている
AWS資格は、2024年4月から受験料が値上げしています。具体的な値上げ幅は以下のとおりです。
レベル | 値上げ前 | 値上げ後 |
Foundational | 11,000円 | 15,000円 |
Associate | 15,000円 | 20,000円 |
Professional | 30,000円 | 40,000円 |
Speciality | 30,000円 | 40,000円 |
FoundationalとAssociateについては5,000円、そしてProfessionalとSpecialityについては10,000円も値上げしています。インターネット上には今もなお以前の金額が掲載された情報が残っているので、注意が必要です。
初心者向けのAWS資格まとめ
初心者向けのAWS資格は、クラウド技術を学び始める絶好の機会になるでしょう。クラウドの世界に初めて足を踏み入れる人々にとってわかりやすく、手軽に挑戦できる内容となっているためです。
さらにインターネットをはじめ学習リソースが豊富なうえ、公式ドキュメントやオンラインコース、模擬試験などを活用することで、合格への道が開かれます。AWS資格の取得はクラウド技術の基礎を固めること、IT業界でのキャリアを一歩前進させるための強力なスキルセットを身につけることに大いに役立つことは間違いありません。
資格を起点により高度なAWS認定資格へと挑戦し、さらに専門性を深めていきましょう。