ディープラーニングって?

E資格を受けたいと考えているエンジニアにとってディープラーニングとはそもそも何かを理解しておくのは肝心です。基本的なコンセプトから社会においてディープラーニングがどのように捉えられているのかについて概説します。これからディープラーニングのプロとして活躍していくための基盤を作るために広い知識を付けておきましょう。

ディープラーニングと有用性

ディープラーニングとは深層学習とも呼ばれる人工知能を用いる情報技術です。ディープラーニングでは人間の持っている知的行為を模倣できるようにアルゴリズムを構築しているのが特徴で、単純に画一化された条件分岐により学習させる技術でも行動させる技術でもありません。認識や推論などの脳を使った知的行為を行えるようにすることで学習を自動的に進められる仕組みを作り上げるのがディープラーニングの基本です。人間が特徴的な数値や量、条件などを指定することで学ばせる機械学習とは異なり、ディープラーニングではデータが存在すれば自動的に特徴を抽出して学ぶことができます。

この処理を行えるようにするために用いられているアルゴリズムがディープニューラルネットワークと呼ばれるものです。人間の脳神経系を模倣して作られているのが特徴で、画像認識、自然言語処理、音声処理などの分野で急速に注目されてきました。画像や自然言語、音声などを機械に情報としてインプットする技術は以前から確立されていましたが、そのインプットされた情報が何なのかを判定するのは困難な状況が続いていました。しかし、ディープラーニングによって精度の高い判定が可能になり、この画像は何か、この言葉は何を意味するものか、この音声はこの人のものか違うのかといったことがわかるようになってきています。

画像認識や音声認識は人の視覚や聴覚に相当する技術ですが、人間の脳神経系の機能を模倣しているディープニューラルネットワークを使えば、嗅覚や触覚、味覚も含んだ認識や学習が可能ではないかと考えられるでしょう。このような視点からマルチモーダル学習の研究も進められている段階にあります。技術が既に発達している視覚と聴覚に相当する画像や音声をそれぞれ独立して認識に使用するのではなく、画像と音声を同時に認識して学習するアルゴリズムなどが実用化されつつあるのが現状です。

一方、ロボティクス分野におけるディープラーニングの活用も進んでいます。ロボティクスでは強化学習を取り入れることで自動的に最適化する取り組みが行われてきていますが、ディープラーニングを導入する動きも生まれてきました。ただ条件付けをして最適化するアルゴリズムを組み込んでおくよりも、ディープラーニングを用いた方が柔軟な形で最適化が進んでいく可能性があるからです。ロボティクス分野における新しいトレンドとして注目され、応用も進められています。

現状の産業では初期から開発されてきた画像認識や音声認識が活発に利用されるようになりました。顔認識や指紋判定、声紋判定による生体認証技術が代表例です。ロボティクスへの応用も進んでいることから、今後はディープラーニングを組み込んだ製品開発が急速に進むでしょう。

ディープラーニングの用語

社会における議論の状況

このようにディープラーニングの有用性は高いのは事実でも社会的に受け入れられるのか、応用できる基盤が整えられているのかは大きな問題です。ディープラーニングの効果を上げ、精度を高めるためには実は莫大なデータベースが必要で、そのデータに基づいて特徴を抽出することにより学ぶ仕組みになっています。世の中にある情報を取得してデータベースとする上で問題になるのが著作権で、著作物を勝手にディープラーニングに使用して良いのかは大きな議論になりました。現行の議論としては著作物をそのまま利用するわけではないという判断が下され、権利制限規定が著作権法に導入されてディープラーニングのために著作物も利用可能になっています。

一方、ディープラーニングには倫理的な問題もあるのは確かです。人間を特徴付ける脳の高次機能を模倣するディープニューラルネットワークは技術の向上の結果として人の脳神経系と同じ機能を果たすようになるのではないかという議論があります。さらには人間を超えるものが生み出され、人間の生活を脅かすようになるリスクについても指摘されているのが現状です。また、ディープラーニングによって生み出された技術について理由や責任の判定が難しいことも大きな問題として捉えられています。例えば試験の合否を機械判定させた場合に根拠を示すのが困難になり、それが誰の責任で決まったのかが明確にはなりません。

このような倫理問題に対してディープラーニングにより生み出された技術の活用範囲についての取り決めが必要ではないかという議論が生まれてきています。その枠組みがどのように定まるかによって今後の技術開発の方向性も考えなければならないのが実情です。

ディープラーニングの展望に期待しよう

ディープラーニングとは人間の脳神経系を模倣したディープニューラルネットワークのアルゴリズムを持つ人工知能技術です。大きなデータベースから特徴を抽出して人間の知的行為や五感と同じようなことができる技術であり、画像や音声の認識からロボティクスにまで応用されています。社会的な受け入れの課題もありますが、今後の幅広い展開が期待できるでしょう。

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