情報処理技術者試験は、IT業界でのスキルや知識を証明する歴史ある資格試験です。試験にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる専門分野に特化した資格が用意されています。
これらの試験を受ける際どの試験を選ぶべきか、また合格率や試験の区分についてのどの程度の理解があるのかは、受験生にとって重要なポイントです。この記事では、情報処理技術者試験の詳細と各試験の概要、歴史やメリットなどをご紹介します。
情報処理技術者試験の概要
情報処理技術者試験は、日本の情報処理技術者を育成・認定するための国家試験であり、情報処理技術者試験センター(IPA)が実施しています。
情報技術(IT)の知識や技術を評価することを目的としており、IT業界での専門知識を証明するための重要な資格として位置づけられています。試験はさまざまなレベルや専門分野に分かれており、IT初心者から上級者までさまざまな層が対象です。
試験は大きく3つの区分に分けられ、それぞれに特化した12種類の試験があり、詳しくは以下の章で紹介しています。各試験は各専門分野に応じた知識と技術を評価する内容が設定されており、合格することでその分野でのスキル・ノウハウを証明できます。
試験は通常春期と秋期の年2回実施され、多くの受験者が挑戦します。なお情報処理技術者試験については、以下の記事でも詳しく紹介しています。興味のある方はぜひご一読ください。
情報処理技術者試験の歴史
情報処理技術者試験は、1969年に日本で初めて実施されました。当時は「急速に発展するコンピュータ技術に対応するための人材育成」が求められていました。そしてこの試験は「IT技術者のスキルを標準化し、産業界のニーズに応える」目的で導入されます。
当初は「第一種情報処理技術者試験」および「第二種情報処理技術者試験」の2種類が設けられており、これらは現在の「基本情報技術者試験」と「応用情報技術者試験」に発展しています。
その後、IT技術の進化と共に試験の内容も拡充され、多様化する技術分野に対応するため、専門的な試験が追加されました。たとえば1994年には「システムアナリスト試験」(現:システムアーキテクト試験)が導入され、プロジェクト管理やシステム設計に特化した試験が実施されるようになりました。
また2001年には「情報セキュリティアドミニストレータ試験」(現:情報セキュリティマネジメント試験)が開始され、情報セキュリティ分野での専門知識も重視されるようになります。
そして時代の変化に伴い、クラウドコンピューティングやAIなどの新技術に対応した試験内容も追加され、現在はIT業界で求められる幅広いスキルを網羅しています。いまや情報処理技術者試験はIT業界での標準資格としての地位を確立しており、日本国内だけでなく海外でもその重要性が認識されています。
情報処理技術者試験は3区分・全12種類
情報処理技術者試験は、IT業界で求められるスキルや知識を認定する日本の国家試験であり、大きく3つの区分に分かれています。区分ごとに異なる12種類の試験が実施され、幅広いIT技術者のニーズに応えています。
概要を一覧にすると、以下のようになります。
区分 | 試験種類 | 略号 | 受験対象者 |
IT利活用者 | ITパスポート試験 | IP | ITに関する基本的な知識を持ちたい人 |
情報セキュリティマネジメント試験 | SG | セキュリティ担当者や情報システム部門に転職したい方 | |
情報処理技術者 | 基本情報技術者試験 | FE | ITに関する基礎知識を持ち、実務に役立つスキルを身につけたい人 |
応用情報技術者試験 | AP | ITに関する応用知識を持ち、より高度な実務能力を求める人 | |
高度情報処理技術者 | ITストラテジスト試験 | ST | IT戦略の立案・実行に関わる専門家 |
システムアーキテクト試験 | SA | 高度なシステム設計・開発の知識を持つプロフェッショナル | |
プロジェクトマネージャ試験 | PM | プロジェクト管理に関するスキルを持つ人 | |
ネットワークスペシャリスト試験 | NW | ネットワークの設計・運用に関する専門家 | |
データベーススペシャリスト試験 | DB | データベース設計・運用の専門家 | |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | ES | 組込みシステムの設計・開発に関する専門家 | |
ITサービスマネージャ試験 | SM | ITサービスの管理・運用に関するスキルを持つ人 | |
システム監査技術者試験 | AU | システム監査を担当する専門家 |
区分の1つ目は「IT利活用者」レベルです。ITに関する基礎知識を幅広く習得するためのもので、ITの基本的な知識を問う「ITパスポート試験」が含まれています
区分2つ目は「情報処理技術者」で、より高度な技術や管理能力を求める試験がメインとなっており、「基本情報技術者試験」や「応用情報技術者試験」がこれに該当します。情報セキュリティやプログラミングの基礎を、プロジェクト管理やシステム設計など広範な部分をカバーしています。
そして3つ目はもっとも難易度が高い「高度情報処理技術者」で、情報処理技術者の中でもとくに専門的かつ高度なスキルを評価する試験です。「ITストラテジスト試験」や「システムアーキテクト試験」は、企業のIT戦略立案やシステム設計のリーダーシップを担うための知識を評価します。「プロジェクトマネージャ試験」では、プロジェクト管理能力が問われます。
他にも「ネットワークスペシャリスト試験」「データベーススペシャリスト試験」などが存在しており、いずれも共通してIT業界で高度な人材として活躍するためのスキルと知識を習得し、キャリアアップを目指すために役立てられます。
なお以下の記事では、上記で紹介している区分「高度情報処理技術者」について詳しく解説しています。合格が極めて難しい資格軍の学習ステップなどを紹介していますので、気になる方はぜひご一読ください。
情報処理技術者試験の合格率・難易度
情報処理技術者試験は区分や種類によって合格率や難易度が大きく異なります。それぞれの難易度を一覧表にまとめると、以下のようになります。
試験種類 | 合格率 | 試験実施日 |
ITパスポート試験 | 約50~60% | 通年(CBT方式) |
情報セキュリティマネジメント試験 | 約50~60% | 通年(CBT方式) |
基本情報技術者試験 | 約40~50% | 通年(CBT方式) |
応用情報技術者試験 | 約20% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
ITストラテジスト試験 | 約20% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
システムアーキテクト試験 | 約15% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
プロジェクトマネージャ試験 | 約14~15% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
ネットワークスペシャリスト試験 | 約13~14% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
データベーススペシャリスト試験 | 約14~18% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | 約16~18% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
ITサービスマネージャ試験 | 約14~15% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
システム監査技術者試験 | 約14~16% | 年2回 春:4月第3日曜 秋:10月第3日曜 |
初心者向けの「ITパスポート試験」や「情報セキュリティマネジメント試験」はITの基礎を学ぶことを目指した内容のため、合格率が約50~60%と比較的高いです。一方「基本情報技術者試験」は合格率が約40~50%で、情報処理における広範な知識が求められるため、難易度がやや上がります。
そして高度情報処理技術者の試験となると、専門的な知識と経験が求められることから合格率がより一層低くなります。たとえば「ITストラテジスト試験」や「システムアーキテクト試験」は約15~20%の合格率で、「プロジェクトマネージャ試験」や「ネットワークスペシャリスト試験」なども同様に、13~15%前後の合格率となっています。
「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」や「データベーススペシャリスト試験」、「システム監査技術者試験」なども、15~18%の合格率で、特定の専門分野における高度な技術力と知識が欠かせません。これらの試験はITプロフェッショナルとしてのキャリアを進めるために非常に重要であり、難易度が高いため入念な準備が求められます。
情報処理技術者試験に合格するメリット
情報処理技術者試験に合格するメリットには、以下のようなものがあります。
- キャリアアップの用途として最適
- 一度取得すれば一生使える実績・知的資産となる
- 幅広いIT業界で使える
それぞれ解説します。
メリット①キャリアアップの用途として最適
情報処理技術者試験に合格することは、キャリアアップにおいて非常に有効な手段になります。資格をもつことで自らの専門知識や技術力を証明できるため、企業からの評価が上がり、昇進や転職時に有利になるからです。
また資格取得によって自己成長やスキルアップが促進され、IT業界での信頼性が高まります。
メリット②一度取得すれば一生使える実績・知的資産となる
2024年8月現在、情報処理技術者試験に一度合格すれば、その資格は更新の必要がなく一生有効な実績となります。これにより、キャリアのどの段階でも長らく活用できる知的資産となり、専門性や信頼性を証明し続けることができます。
そのため資格の取得は、長期的なキャリア形成において非常に価値があるものとして、多くの方々が挑戦しています。
メリット③幅広いIT業界で使える
情報処理技術者試験は、IT業界全般で必要とされる基礎的な知識から高度な専門知識までを網羅しています。そのため、合格することで得られるスキルはシステム開発、ネットワーク管理、データベース運用、プロジェクトマネジメントなど、幅広い分野で活用可能です。
いずれの分野においてもITの基盤となる知識が求められるため、この試験に合格することで、界内での信頼性や適応力が大幅に向上します。
情報処理技術者試験まとめ
情報処理技術者試験はIT業界での高いスキルや知識を証明する資格試験です。試験は複数の種類に分かれており、初級から上級まで幅広い区分が設けられています。
各試験はそれぞれ専門的な分野に特化しており、受験者は自分のキャリアや目標に応じた試験を選択できます。合格率は試験ごとに異なりますが、十分な準備と学習によって毎年多くの受験者が合格を果たしています。
試験に合格することで自らの技術力を証明できるため、スムーズなキャリアアップが実現できます。資格取得のプロセスを通じてIT技術者としての基盤を築き、未来のさらなる成長へとつなげていきましょう。