AIが急速に普及している現代のビジネスでは、技術者として専門性を証明できる資格の有無が重要になってきています。特に知識と実務スキルを持つエンジニアの採用が急増しており、以前と比べE資格を受験するメリットが高まってきました。
ですが、エンジニアの中には、「E資格がどんな資格かわからない」「E資格の受験について詳しく知りたい」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、E資格の受験を考えている方に向け、E資格の内容や受験資格、キャリアに有利な理由について詳しく解説します。
E資格とは
E資格は、ディープラーニングの専門知識と実務スキルを認定する資格です。日本ディープラーニング協会(JDLA)が運営しており、AIエンジニアとしてのスキルを証明するために設けられました。
近年、E資格が必要とされる理由は、AI技術の進展に伴い、ディープラーニングの専門知識を持つAI人材を求める企業が増えているためです。E資格の受験には条件があるものの、誰でも挑戦できる資格になっています。
E資格とG検定の違い
E資格は、ディープラーニングを活用したシステムの構築・実装に必要な知識と技術を認定します。主にAIエンジニアや技術職を対象とし、受験ではAI技術を開発・運用するためのプログラミングやデータ処理のスキルが求められます。
G検定は、ディープラーニングの基礎知識を理解し、ビジネスでAIを活用する能力の認定を目的としています。主にビジネスマンやジェネラリストを対象とし、受験ではAIの基本的な概念や技術を理解し、ビジネス戦略に組み込むスキルが求められます。
難易度では、E資格よりもG検定の方が易しく、基礎知識を学べるのがG検定です。未経験者やエンジニア経験の浅い人の場合、G検定を受験してからE資格の取得に挑戦するのも選択肢として有効でしょう。
試験の内容
E資格の試験内容について、項目に分け以下の表にまとめました。特に、出題範囲(シラバス)と試験内容は受験前に押さえておきたいポイントです。
項目 | 内容 |
問題数 |
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出題形式 | 100問程度 |
出題範囲(シラバス) | 多肢選択式 |
試験内容 |
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受験資格 | 数学的理論の理解 機械学習の基礎 深層学習のアルゴリズム |
受験費用 | 過去2年以内にJDLA認定プログラムを修了 |
試験会場 |
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試験会場 | 各地の指定試験会場(申し込み時に選択) |
試験の頻度 | 年2回(2月・8月) |
2022年後期の試験より、PyTorchまたはTensorFlowのいずれかを選択する受験方式が導入されています。試験開始時に選択し、選択後の変更はできませんのでご注意ください。
また、E資格のシラバスは2024年8月から改定されました。詳しくは以下の記事で解説しています。
E資格のシラバスの改定内容!2024年8月試験から適用
E資格の難易度
上記のデータを参照にすると、E資格の受験合格率は65~75%で推移しています。2021年以降は70%を超える状態をキープしており、合格率は比較的高いといえるでしょう。
合格率が高い大きな理由は、受験の必須条件である「JDLA認定プログラム」の存在もあります。JDLA認定プログラムを修了した時点で、受験者は必要な知識・スキルを体系的に学べているため、高い合格率につながっていると考えられます。
合格率が高いとはいえ油断は禁物
E資格は合格率は高いですが、一定の教養と経験が必要な問題が出題される点には注意が必要です。合格率の高さには、現役エンジニアによる合格率の底上げが大きく影響しているとも言われています。
例えば応用数学では、統計学・線形代数・微積分など、大学で学ぶレベルの知識が必要です。数学的な思考が身に付いていない場合、AIに必要な数学理論について書かれた参考書等で勉強しなければなりません。他にも、NumPy・Matplotlib等のデータ処理ライブラリや、Pythonのプログラミング経験がなければ理解できない問題も出題されます。
こうした理由から、合格率の高さに慢心せず、十分な勉強・予習時間の確保が必要なのです。
E資格の受験に効果的な勉強法
E資格の合格を目指す上で効果的な勉強法は、「専門書・問題集」「動画」です。それぞれの勉強法について見ていきましょう。
専門書・問題集
専門書・問題集は、E資格の受験合格に必要な知識について基礎から応用までカバーしています。
専門書では、数学・深層学習・PyTorch・Pythonコーディングといった専門的な内容を個別に学べます。高校で学ぶ数学から段階的な復習、わかりやすい図解による解説で、JDLA認定プログラムの復習や予習に使いやすいでしょう。
問題集は、出題されやすい問題が網羅されており、過去問題が公表されていないE資格の受験では必須の勉強法です。苦手な問題を中心に、模擬試験だと考えて活用しましょう。
E資格の専門書・問題集について、さらに詳しく知りたい場合は以下の記事で解説しています。
【2025】E資格の勉強に最適な問題集・参考書はどれ?目的別に良質な一冊を紹介します!
動画
YouTubeには、E資格に関連する動画が多数アップロードされています。専門知識を持つ出演者が、音声と文字の両方で解説してくれるため、テキストよりも理解が進みやすいのがメリットでしょう。
動画の内容としては、以下のようなものがあります。
- 数学
- 深層学習
- 機械学習
- E資格に出題されやすい問題
- 合格者が語るE資格対策
未経験者や特定の領域で知識が足りてない受験者に向け、わかりやすく解説してくれる動画が多いのも魅力です。
専門書・問題集と併せて、E資格に関して理解しきれていない領域の予習・復習に活用しましょう。
合格率83.3% E資格対策ディープラーニング短期集中講座
E資格対策ディープラーニング短期集中講座は、修了後に受験資格も得られるJDLA認定プログラムのセミナーです。AIエンジニア未経験の方でも、短期間でディープラーニング・プログラミング基礎・確率統計・ニューラルネットワーク実装といった、実務・受験の両方で使える内容を体系的に学べます。
教材にも力を入れており、572ページのボリュームを誇る「E資格完全攻略テキストブック」は、セミナー受講後の自習・復習はもちろん、エンジニアの実務でも役立つ情報が網羅された必読の書籍です。
手元に置いておくだけで何度でも見直せるマニュアルで、受験だけでなく、AIエンジニアとしてスキルを高めるためにも活用できるでしょう。
徹底的に無駄をなくしたカリキュラムで短期間で知識を伝え、受験合格に向けサポートしてくれるのがE資格対策ディープラーニング短期集中講座です。
受講期間 | 4日 |
受講形式 | 会場受講 ライブウェビナー eラーニング |
受講料 | 会場受講:138,600円(税込) ライブウェビナー:138,600円(税込) eラーニング:54,780円(税込)※ |
※eラーニングはキャンペーン割引価格
E資格の受験資格
E資格を受験するには、受験日の過去2年以内に一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が認定したプログラムを修了する必要があります。修了するプログラムは、JDLAが認定しているものであればどの講座・セミナーでも問題ありません。
JDLA認定プログラムでは、ディープラーニングの理論や実装に関する知識を学べ、受験者がE資格の受験前に実践的なスキルを習得できます。また、JDLA認定プログラムを必修としているため、段階的に能力を磨ける受験の仕組みにもなっています。
E資格の受験の流れ
ここでは、E資格の受験の流れについて簡単に解説します。受験全体の流れで特別な要素はありませんが、大まかな流れを理解しておくと、受験のスケジュールが立てやすくなります。
1.JDLA認定プログラムを修了する
E資格を受験するには、まずは前述したJDLA認定プログラムを修了し、受験資格を得なければなりません。
JDLA認定プログラムを修了すると、修了証が発行されます。修了証(修了者ナンバー)を試験申し込み時に提示し、受験資格を証明します。
2.試験に申し込む
JDLA認定プログラムを修了したら、E資格を受験するためにJDLAの公式サイトから申し込みを行います。受験に必要な情報として、以下の4つを申し込みフォームに入力します。
- 修了者ナンバー
- 認定プログラム事業者名
- 修了日
- 受験料の支払い方法
受験料の支払いは、クレジットカードまたはプリペイドバウチャーで行えます。
3.受験
当日は、申し込み時に選択した試験会場で受験します。受験者は、試験開始前に身分証明書を提示し、受験環境に関する注意事項を確認する必要があります。
受験が終了したら、試験の結果は3週間を目途に後日メールにて通知されます。
E資格がキャリアに有利な3つの理由
E資格は、年収・経歴の面でプラス材料になる点もメリットです。ここからは、E資格がキャリアに有利な3つの理由を解説します。
資格手当で年収アップの可能性がある
AI人材の市場価値が高まりに合わせ、E資格所有者に資格手当を出す企業は増えており、E資格所有者は年収アップが期待できます。
E資格の場合、月に10,000円~20,000円ほどの資格手当が支給されることが一般的です。年間では100,000円~240,000円の違いになるため、資格手当が用意されている企業ならば、受験する価値はあるでしょう。
自社のAI導入時に活かせる
E資格の受験過程で身に付けたディープラーニングの知識は、自社のAIシステム導入で活かせます。
AI技術の導入は、企業の競争力を高めるために不可欠ですが、適切な知識・スキルがなければ効果的な運用はできません。E資格所有者は、受験過程でディープラーニングの知識やスキルを身に付けているため、AI関連のプロジェクトを進める上で即戦力になります。
また、実力が認められて社内評価が向上する可能性もあります。その結果、AI関連のプロジェクトに参加する機会が増えるなどチャンスにつながります。キャリアを充実させる意味でも、受験する価値があるといえるでしょう。
AI業界への転職に有利になる
E資格所有者は、AI業界への転職で有利になります。
中でも、特に近年のビジネスで注目されているのが生成AIでしょう。総務省が発表している「令和6年版 情報通信白書|市場概況」によると、世界の生成AI市場は2023年に約670億ドルの規模でしたが、2032年には1兆3,040億ドルに成長すると予測されています。日本国内でも企業の生成AIの導入が進んでおり、E資格を取得したスキルのあるAIエンジニアの需要が増加しています。
AIが急速に社会に普及している中、AIの専門知識を持つ人材は不足しており、E資格所有者は優先的に採用されやすい状況です。キャリアの選択肢の意味でも、E資格の受験価値は高まってきているといえるでしょう。
E資格のよくある質問3選
最後にE資格に関するよくある質問について回答します。どの質問も受験前に知っておきたい内容ですので、チェックしておきましょう。
独学で合格を目指せる?
独学でE資格の受験に合格はできません。前述のようにJDLA認定プログラム修了が必須だからです。
経験者・未経験者問わず、JDLA認定プログラムでは、受験のために講師からディープラーニングやAIに関する知識・スキルを学ぶ必要があります。そのため、完全な独学で勉強を進めることは不可能です。
E資格は取得しても意味がないのは本当?
「E資格は取得しても意味がない」「受験するだけ無駄」と言われている理由は、『ディープラーニングや機械学習といった分野が比較的新しく、資格として評価されづらい』ことも挙げられます。
また、合格率が65%~75%と比較的高いことで、簡単な受験であると思われている点も理由でしょう。そのため「簡単なので資格として価値がないのでは?」と誤解されているとも考えられます。
企業では、AI導入や実務利用が増え、ニーズのある資格に変化する可能性が高く、受験する価値は高くなるのではないでしょうか。
試験合格後のサポートはある?
受験の合格者は、JDLAが運営する「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」というコミュニティに参加できます。
CDLEでは、他の合格者と情報交換を行ったり、勉強会などのイベントを通じてスキルを身に付けるため、サポートの場としても活用できるでしょう。合格者同士で情報交換できるコミュニティは以下の2つです。
- Slack
- コミュニティサイト
イベントは日本ディープラーニング協会の公式YouTubeチャンネルで後から見直せます。
E資格まとめ
本記事ではE資格について、受験資格やキャリアに有利な理由を解説しました。E資格は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が認定する、AIエンジニアとしての専門的なスキルを証明する資格です。
受験には「JDLA認定プログラム」が必須です。JDLA認定プログラムを受講できるE資格対策ディープラーニング短期集中講座では、短期間でE資格の受験に必要な内容を学べます。
問題範囲は応用数学・機械学習・深層学習・開発/運用環境の4つの分野に渡るため、勉強する範囲は広くなっています。
ただ、合格率は65%~75%と比較的高いためものの、しっかり知識をインプットし理解することが欠かせません。
日本を含め、世界のAI市場は成長すると予測されており、E資格の価値は高まることが予想されます。E資格の受験に挑戦し、合格して成長市場であるAI業界で活躍する人材を目指してみませんか。