多くの業界がデジタル化と無縁ではいられなくなった現代。ITに関する知識を有する人材の有用性はますます高まっています。
しかし、デジタル社会の発展スピードに対し、日本ではIT人材の育成が追いついているとは言い難い状況です。企業組織や社会におけるDXが急がれる今後は、IT関連人材の需要はさらに高まっていくでしょう。
また、IT分野のなかでもデータサイエンス、人工知能(AI)、AR/VR、ブロックチェーンなどの先端技術を有する「先端IT人材」は、社会的なニーズに対して圧倒的に不足しています。ITの世界で真に力を発揮したいと考えるならば、これらの高度な専門分野に挑戦し、希少性のある有力なエンジニアを目指す必要があります。
この記事では、先端IT人材の一つである「AIエンジニア」として、実力・実践力を身に付けるための資格、「E資格」について解説します。
E資格はどんな資格?
E資格は、正式名称をJDLA Deep Learning for ENGINEER(JDLAディープラーニングフォーエンジニア)といいます。E資格の「E」はエンジニアという意味です。
E資格とはどのような資格なのでしょうか?
E資格とは
JDLAとは一般社団法人日本ディープラーニング協会の略称です。JDLAは、ディープラーニング技術を向上させ、日本の産業競争力の向上を目指すために設立されました。
E資格は、JDLAが実施するAIに関する資格試験で、国内の人工知能の資格試験としては最高難易度といわれています。E資格に合格するためには、ディープラーニングの理論を正確に理解し、適切な手法で実装する能力や知識を有していることが求められます。
E資格試験が初めて実施されたのは2018年で、比較的新しい資格といえます。
2019年以降は2月と8月の年2回実施されており、各回の試験には2019#1、2019#2、2020#1、2021#1といった名称が付けられています(2020#2は新型コロナウイルス感染症の影響で中止になりました)。
合格者は「JDLA Deep Learning for ENGINEER 2021#1」のように、試験名称とともに資格認定されることになっています。ディープラーニングの領域は進歩が目覚ましく、たった一年経過しただけで必要な知識が大きく変わってしまう世界です。そのため、合格者の知識レベルが明確になるように、どの年のE資格試験に合格しているかわかるようにしているのです。
E資格の試験概要
2022年10月現在、JDLAは以下の試験概要を公表しています。
試験時間:120分
知識問題:(多肢選択式・100問程度)
試験会場:各地の指定試験会場にて受験可能。申し込み時に、希望会場を選択する。
出題範囲:シラバスより、JDLA認定プログラム修了レベルの出題
受験費用:一般:33,000円(税込)、学生:22,000円(税込)、会員:27,500円(税込)
詳しい情報はJDLA公式サイトを参照しましょう。
G検定との違い
同じくJDLAが実施する資格試験にG(ジェネラリスト)検定があります。
名前にジェネラリストとつくように、AIやディープラーニングに関する体系的な知識を持っていることが証明できる資格です。
E資格がディープラーニングの高度な実装を目指すエンジニア向けの資格であるのに対し、G検定は初めて人工知能やデータサイエンスを学ぶ人に向いているといえるでしょう。管理職やコンサルタントなど、開発や研究には携わらない人も多く受験しています。
E資格試験を受けられるのはどのような人?
E資格試験を受験けるためには、過去2年以内にJDLA認定プログラムの受講を修了している必要があります。
JDLA認定プログラムは、「AIエンジニアリング講座」や「ディープラーニング講座」といった名称でさまざまな教育事業者が実施しており、値段も数万円~数十万円と幅があります。JDLAが認定推奨しているプログラムであればどの講座を受講しても受験資格を得ることが可能です。
JDLA認定プログラムの受講は受験資格獲得のためだけでなく、E資格試験合格に向けて必要な知識を学ぶためにも重要です。自分に合った講座を見つけ、内容をしっかりと理解する必要があるでしょう。プログラム終了後には修了テストがあり、これに合格しなければ修了ナンバーがもらえないので、ただ受講するだけでなく確実に知識と技術を身に付けることが大切です。
E資格の難易度
2022年8月26日(金)、27日(土)、28日(日)に実施された「E資格2022#2」では、受験者数897名のうち合格者は644名、合格率は71.79%という結果でした。過去7回の結果と併せると合格率は74.00%であり、一見合格しやすい資格試験のように感じます。
しかし、そもそもE資格試験の受験者はJDLA認定プログラムを修了できるだけのスキルがある人達です。JDLA認定プログラムを受講するためには、ディープラーニングの前提知識である数学・統計学・Python・機械学習についても一定レベルの理解が必要です。エンジニアとしての知識や実務経験を積んでいる人がほとんどでしょう。
そのため、E資格試験は決して簡単という訳ではありません。経済産業省が策定したIT人材のスキル体系である「ITスキル標準(ITSS)」ではレベル3~レベル4(最高レベル)の試験に相当するといわれています。定期的に出題傾向が変更され、過去問が存在しないことからも、付け焼刃の学習では歯が立たないと考えて良いでしょう。
E資格学習の始め方
E資格を受験するためにはJDLA認定プログラムを受講しなければなりませんが、認定プログラムそのもののレベルが高いと思っておきましょう。
AIに関してまったくの初心者という人は、まずはG検定の受験から始めたり、AIの開発やデータ分析に必要なPython関連の知識、NumPy、Pandas、Matplotlibなどのライブラリを使ったデータ分析方法などを学ぶことから始めると良いでしょう。
株式会社VOSTでは、AIプログラミングの習得から、ビジネスパーソン向けAIセミナー、E資格対策講座まで、多種多様なAIの学びのニーズにお応えしたセミナーをご用意しています。今の自分の知識レベルや学習スタイルにあったセミナーを見つけ、効率よく学習を進めていきましょう。
VOSTが実施するJDLA認定プログラムおよびE資格対策講座はこちらからご覧いただけます。
E資格は本当に必要?
E資格は比較的新しい資格ですが、ビジネス領域におけるAIの活用が進むに従って注目度が高まっています。
とはいっても、E資格がAIエンジニアになるための必須資格という訳ではありません。E資格を受験する意味はあるのでしょうか?
スキルの証明になる
E資格はAI関連資格のなかでも最高難易度の資格です。
そのため、E資格に合格することで、AIエンジニアとしての深い知識と実務能力をアピールする材料になります。E資格の知名度は近年上昇しており、その有用性は一般の企業でもよく知られています。転職サイトなどを見てみると、AIエンジニアの募集要件や歓迎要件に「E資格合格者」と記載している企業は多く、給与などの条件面でも有利になる可能性があります。
AI関連の知識が網羅できる
AIエンジニアには特別な資格や学歴は必要ありませんが、専門性の高い領域であることから、独学で知識を身に付けるには限界があります。
現在活躍しているAIエンジニアの多くは、大学の専門学部やIT系の専門学校を卒業し、企業で実務経験を重ねた人ばかりです。そのような下地がなくイチからAIエンジニアを目指そうとする場合に、AIに関する知識を体系的に学べるE資格試験は最適な学習の機会になるでしょう。
AIコミュニティ「CDLE」のメンバーになれる
E資格とG検定の合格者は、日本最大のAIコミュニティCDLE(シードル)に参加することができます。
CDLEとは、JDLAが主催するコミュニティで、日本中のAIに携わる人々が集まり、学び合い、アウトプットすることで、ディープラーニングの社会実装と発展を目指しています。CDLEハッカソンをはじめ、さまざまなイベントが企画されているので、優秀で好奇心旺盛なエンジニアにとってはとても有意義な機会が得られるはずです。
まとめ
E資格は、AIエンジニアとして確実な知識と技術を身に付けていることを証明できる資格です。
AIの有用性と可能性はさまざまな業界で認知されており、優秀なAIエンジニアを望む企業は増え続けています。E資格試験に合格することで、社会を革新する素晴らしい技術の先駆者になっていけるでしょう。
E資格は誰もが簡単に合格できるほど易しい資格ではありませんが、挑戦する価値は非常に大きいといえるでしょう。