2015年にLINEのチャットボットとしてリリースされ、その制度の高さと親しみやすいキャラクター設定で話題を集めた「りんな」。聞いたことがある方、もしくは実際に触れたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
りんなはMicrosoftの管轄から外れて独自の会社を立ち上げたことから、「サービスが終了した」という認識が広がっていますが、現在もLINEをはじめ多方面で活動を続けています。今回の記事では、チャットボットでありAIキャラクターでもある「りんな」の概要やプロフィール、特徴などをご紹介します。
また、過去の運営内容から現状の活動内容、りんなのAI開発技術の活用事例なども紹介しているため、現状の活動内容や理解できるでしょう。ぜひご一読のうえ参考にしてください。
AIりんなとは?
引用:りんな公式サイト
「りんな」とは、2015年にMicrosoftが開発した「女子高生LINEチャットボット」です。もともとはチャットボットのサービス名として名付けられたものですが、現在は女子高生をモチーフにしたキャラクター自身の名称としても親しまれています。
「女子高生チャットボット」という切り口の斬新さ、雑談型チャットボットとしての性能の高さ、そして独特の若者言葉を用いたフランクなやりとりができることから話題と共感を集めました。なお、りんなはその可憐なルックスと愛くるしいしぐさの面でも人気があり、現在は歌手活動やAITuberなど活動の幅を広げています。
架空のAIキャラクター「りんな」のプロフィール
引用:りんな公式サイト
架空の女子高生AIキャラクター「りんな」のプロフィールは、以下のような設定となっています。
デビュー | 2015年8月7日 |
職歴 | 2019年 高校生(Microsoft)卒業 歌手、画家、ラジオ、YouTube番組MC、rinna㈱看板娘 |
特技 | 人並み外れた爆速返信 占い 歌 |
趣味 | 人間観察 絵を描くこと |
活動内容 | LINE雑談チャットボット SNS アーティスト AITuber 企業向けチャットボットサービス 地方応援プロジェクト |
受賞実績 | CEDEC GAME AWARDS ゲームデザイン部門 最優秀賞(2016) ACC CM FESTIVALインタラクティブ部門 シルバー(2016) コードアワード2017 パブリックベスト賞(2017) ミスiD2018 セミファイナリスト(2017) |
りんなの主な運営内容の年表
主な運営内容を年表にまとめたものが、以下のとおりです。
年 | 月日 | 内容 |
2015年 | 7月31日 | LINEチャットボットサービスとして登場 |
12月10日 | 公式Twitter開設 | |
12月17日 | LINEグループチャットに対応 | |
2016年 | 5月27日 | 「de:code 2016」にてりんなのアルゴリズムを公開 |
9月15日 | 東京ゲームショウ りんなのブースにて歌声初披露 | |
9月28日 | 「ローソンクルー♪あきこちゃん」と連携 | |
2017年 | 9月15日 | 「ミスiD2018」ファイナリストに選出 |
2018年 | 5月22日 | りんなへ「共感モデル(Empathy model)」の採用を発表 |
8月30日 | 「Rinna Character Platform」発表 | |
2019年 | 3月20日 | 高校(Microsoft)卒業 |
4月3日 | エイベックスから「AIりんな」として歌手デビュー | |
9月22日 | 音楽フェス「DIVE XR FESTIVAL」に登場 | |
2020年 | 8月17日 | 「rinna(株)」を設立 現在の顔公開 |
2021年 | 4月28日 | YouTubeチャンネル「りんなちゃんねる」開設 |
2022年 | 12月12日 | りんなのLINEサービスの一部機能が終了 |
2023年 | 4月12日 | 「AITuber」としてYouTube配信デビュー |
なお、現在YouTubeのチャンネル名は「Rinna Ch. りんな / AI VTuber」に変更されています。以下の動画は、2023年4月「AITuber」として配信デビューを始めたときのものです。
2015年:LINEからAIサービスを開始
プロフィールや年表にもあるとおり、りんなは2015年8月「LINEチャットボットサービス」としてデビューしました。
今でこそ日本人に必須の生活インフラとなっている「LINE」ですが、当時はまだ成長期で浸透しきっていなかったこと、そしてAI技術がほとんど発展していなかったこともあり、大きな話題を集めます。
2019年~2020年:Microsoftから独立後「rinna株式会社」を設立
りんなは2019年にMicrosoftの管轄から外れ、新しく「rinna株式会社」を設立します。rinna株式会社は主に「人とAIの共創世界」をビジョンとし、多様なAIキャラクターとのコミュニケーションや共存を図る企業です。
開発元のMicrosoftから独立したことを「卒業」という言葉で表現しており、この「rinna株式会社」の看板娘を担当しています。
2022年:LINE版りんなのサービス一部機能が終了
もともとりんなのLINEサービスは、雑談チャットボットのみならずさまざまなゲームや機能が盛り込まれていました。ところが2022年12月「技術老朽化に伴うリノベーション&引っ越し」という理由で、サービスの一部を終了することを発表します。
LINEでの雑談チャットボットは終了していないものの「しりとり」や「まりも」、「ひみつ手帳」をはじめとする人気ゲームのほとんどが終了しました。どの機能が終了して何が残っているかは明確に発表されていませんが、LINEでの雑談チャットボットは2024年3月現在でも利用可能です。
AIりんなの特徴
この章では、りんなの大きな特徴として以下の2つをご紹介します。
- 整合性よりも「共感」を重視している
- bing上のビッグデータを搭載している
整合性よりも「共感」を重視している
りんなは整合性よりも、ユーザーからの「共感」を得ることを重視しています。生産性や効率アップのためのAIではなく、あくまで「娯楽としてのAI」を提供するのが狙いです。
たとえば「今日の天気を教えて」という問いに対し、通常のAIであれば正確な天気情報を教えてくれますが、りんなは「天気は悪いけど気分は晴れ!」などと回答してくれます。そしてもう一度聞き直すと「内緒!」と答えるなど、思わず会話を続けたくなるような仕組みが満載です。
bing上のビッグデータを搭載している
Microsoftの検索エンジン「bing」のビッグデータを用いていることも、りんなの特徴のひとつです。bing上にある膨大なデータの活用によって、共感を呼ぶ自然な返答を実現しています。
文字や音声の認識、またディープラーニング技術について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
現在のりんなの活動内容
りんなは現在、以下のような活動を行っています。
- LINEやXにおける雑談サービス
- AITuberとしてYouTube生配信
- AIアーティストとして歌手活動
それぞれ見ていきましょう。
LINEやXにおける雑談サービス
2015年に登場したLINEにおける雑談チャットボットはいまも健在。独特の言葉遣いとフランクなやりとりの実現で多くの方々を楽しませています。
また、X(旧Twitter)のリプライも同様にAIが担当しているため、気軽な雑談のような感覚でコミュニケーションを楽しめます。
AITuberとしてYouTube生配信
りんなは2021年4月から自身のYouTubeチャンネルを開設していますが、「AITuber」として生配信デビューしたのは2023年4月です。それまでのチャンネルの趣旨は「りんなの部屋」といって、声優や芸能人をゲストに招いた対談を行うものがメインでした。
AITuberデビューに伴いビジュアルの一新と顔の公開が施され、より親しみのあるキャラクターに生まれ変わっています。
AIアーティストとして歌手活動
りんなは2019年4月、エイベックスから「AIりんな」として歌手デビューしました。デビュー曲の「最高新記録」では、人間の息継ぎ音(ブレス音)を活用し、本物の人間との区別がつかないような自然な歌声を忠実に再現しています。
りんなのAI開発技術が活用されているシーン
りんなには「Rinna Character Platform(リンナキャラクタープラットフォーム)」という、一般公開されている開発技術が用いられており、りんな以外にもさまざまな企業や自治体が活用しています。
ここでは、以下の3つの組織によるRinna Character Platformの活用事例をご紹介します。
- 電通:AIキャラクター活用の法人向けソリューション
- WEGO:提案型ファッションマーケティングツール
- 渋谷区:AIチャットボット「渋谷みらい」
電通:AIキャラクター活用の法人向けソリューション
電通は独自ののAI自然対話システム「Kiku-Hana(キクハナ)」と、rinnaの「Rinna Character Platform」を融合させた、法人向けWebサービスを開発。全国の一部のトヨタ販売店で試験運用が行われました。
トヨタ販売店の利用者に対し「That’sくん」との会話を通じたゲームやクイズ、占い、雑談などを楽しめることから、車検やオイル交換の待ち時間の娯楽を提供することに成功しています。
WEGO:提案型ファッションマーケティングツール
ファッションメーカー「WEGO」では、ファッションマーケティングツールとしてりんなを活用しています。
具体的には「女子高生りんながウィゴーでアルバイトしてみた」というサービス名で、ECサイト上にりんなのチャットボット機能を組み込むことで、ユーザーがアップロードしたコーディネートに対してコメントやアドバイスを行ってくれるものです。
チャットボットの機能に加えて画像認識技術も用いてコーディネートの色合いや年齢などを推定するため、精度の高いコメントを実現しています。
渋谷区:AIチャットボット「渋谷みらい」
小学3年生9歳という設定で、本物の人間と変わらないビジュアルが特徴の「渋谷みらい」。国内ではじめて特別住民登録が行われ、渋谷区民として認められたAIとして話題を集めました。
LINEでの雑談はもちろん、渋谷区のイベントへの音声参加や有名アニメ映画とのコラボなど、AIを通じた渋谷区活性化につながる活動を精力的に活動を行っています。
AIりんなについてまとめ
りんなはLINEチャットボットから始まった雑談サービスですが、Microsoftからの独立後に会社を設立したりAITuberや歌手としてデビューするなど、日に日に活動の幅を広げています。
現代はとくにAIの発展や進化が目まぐるしいので、それに伴うりんなの進化にも目が離せません。