現代のビジネス環境では、業務効率化や競争力強化が求められています。しかし、これを実現するための具体的な手段に悩む方も多いのではないでしょうか。特にICT(情報通信技術)の導入は、効率化や新たな価値創出に役立つ一方で、どのように活用すればよいかわからない方もいるでしょう。
そこで、本記事ではICTの基本的な概念から、ビジネスへの活用例、さらには主要産業での成功事例まで解説します。また、導入時に直面する課題とその対策についても触れていますので、ICTの知識を身につけたい場合は、ぜひ参考にしてください。
ICTとは
ICTとは、情報通信技術を意味する言葉です。ITと似ていますが、ICTはコミュニケーションを重視します。たとえば、スマートフォンやSNSの活用がICTに当たります。ICTも含め、類似した用語の特徴を表にしました。
また、近年、ICTが注目されており、主な理由として3点挙げられます。1つ目は業務効率化への期待です。2つ目は新しいビジネスモデルの創出で、3つ目は社会課題の解決への貢献です。
ICTの普及は、さまざまな業界に大きな影響を与えています。たとえば、製造業では生産性が向上し、小売業では顧客体験が変わりました。医療や教育の分野でも、ICTによるサービスの質の向上が見られます。
今後、ICTはさらに発展し、私たちの生活や仕事を大きく変えていくでしょう。そのため、ICTへの理解を深めることが重要になってきています。
ICT・IT・IoTの違い
ICTと類似した用語はいくつかあります。ここでは、ICTとIT、IoTの違いを見ていきましょう。
項目 | ICT (情報通信技術) | IT (情報技術) |
IoT (モノのインターネット)
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定義 | 情報通信技術全般を指し、通信とコンピュータ技術を統合して情報の交換や共有を可能にする技術 | コンピュータやネットワークを活用してデータを作成、処理、保存、伝送する技術 |
センサーやソフトウェアを組み込んだ物理的なデバイス同士がネットワークで接続され、データ交換や自動化を実現する技術
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主な構成要素 | 通信デバイス(携帯電話、ラジオ、テレビ)、コンピュータハードウェア、ネットワークシステム | コンピュータ(ハードウェア)、ストレージ、ネットワークインフラストラクチャ |
センサー、ソフトウェア、ネットワーク接続
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主な用途 | 情報の共有やコミュニケーションの促進 | ビジネス運営やデータ管理の効率化 |
デバイス間の接続によるデータ交換、自動化、リアルタイム制御
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例 | インターネット、モバイルネットワーク、テレビ放送 | データベース管理、クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ |
スマートホーム(照明・温度制御)、産業オートメーション(予知保全)、スマートシティ(交通管理)
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ITは主にデータ管理や処理を効率化する技術で、IoTは物理デバイス同士がネットワークで接続し、自動化やリアルタイム制御を実現します。
用途や使用例において、それぞれに違いがみられます。
ICTとDXの違い
ICT(情報通信技術)とDX(デジタルトランスフォーメーション)は、どちらもデジタル技術を基盤としますが、その目的や活用範囲が異なります。
ICTは主に情報の共有やコミュニケーションの効率化を目的とする技術であり、DXはデジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを革新し、新たな価値を創出する取り組みです。
また、ICTは基盤的な技術であり、DXはその技術を応用して変革を実現するという関係性があります。DXはICTの活用範囲を拡大し、企業や社会に新しい価値をもたらというわけです。
ビジネスにおけるICT活用例
ICTは、ビジネスの効率化や新たな価値創出に欠かせない技術です。
- コミュニケーション
- ビデオ会議システム
- クラウドサービス
- ビッグデータ分析と意思決定
- 新たなビジネスモデル
- プラットフォームビジネス
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
ここでは、具体的な活用例を解説します。
コミュニケーション
ICTは社内外のコミュニケーションを円滑にするために活用されています。たとえば、メールやチャットツールを使うことで、迅速な情報共有が可能になります。これにより、従業員同士の連携が強化され、生産性が向上します。また、これらのツールは遠隔地のチームともスムーズにつながる手段として有効です。
ビデオ会議システム
ビデオ会議システムは、場所を問わず会議を可能にするツールです。ZoomやMicrosoft Teamsなどが代表的な例です。これらのシステムを使えば、移動時間を削減しながら意思決定を迅速化できます。また、画面共有機能を活用することで、資料を視覚的に共有しながら議論を進めることが可能です。
クラウドサービス
クラウドサービスは、データやアプリケーションをインターネット経由で利用できる仕組みです。Google DriveやDropboxなどがその例です。この技術により、従業員はどこからでも必要な情報にアクセスできます。また、データのバックアップやセキュリティ対策も容易になるため、多くの企業で導入されています。
ビッグデータ分析と意思決定
ICTは大量のデータを分析し、意思決定をサポートする役割も果たします。たとえば、小売業では顧客の購買履歴を分析し、個別ニーズに応じたマーケティング戦略を立てることが可能です。また、製造業では生産ラインのデータ分析によって、不良品の発生率を低下させる取り組みが進められています。
新たなビジネスモデル
ICTは新しいビジネスモデルの創出にも役立てられます。特に注目されているのがサブスクリプションモデルです。このモデルでは、商品やサービスを定期的に提供することで継続的な収益が得られます。NetflixやSpotifyなどが成功例として挙げられます。また、この仕組みは顧客との長期的な関係構築にもつながります。
プラットフォームビジネス
プラットフォームビジネスとは、多くのユーザーとサービス提供者をつなぐ仕組みです。ICTの進化によって、このモデルは急速に普及しました。代表例としてAmazonやUberがあります。これらの企業は、ICT技術を活用して効率的なマッチングと取引環境を提供しています。
なお、Amazonが提供するAWSに関しては資格もあります。ICTに活かせる資格ですので、気になる方は次の記事もあわせてご覧ください。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
先述しましたが、DXとは、ICT技術を活用して企業全体の変革を図る取り組みです。具体的には、業務プロセスの自動化や顧客体験の向上などがあります。
たとえば、小売業ではオンラインとオフラインを融合したオムニチャネル戦略が進められています。このようにDXは競争力強化だけでなく、新しい価値創出にもつながります。
なお、DXの知識や技術を習得したいときは「DX完全攻略ハンズオンセミナー」がおすすめです。「DX完全攻略ハンズオンセミナー」は、DXの学習が未経験の方でも受講可能で、1日で応用レベルまで学習できます。DXの基礎から応用まで効率的に学びたいときは、ぜひ受講を検討してください。
ICTがもたらすメリット
ICTの活用は、企業に多くのメリットをもたらします。
- 生産性と効率性の向上
- グローバル展開
- イノベーションの促進
- 顧客体験の向上
ここでは、主要な4つのメリットについて解説します。
生産性と効率性の向上
ICTの導入により、業務プロセスが大幅に効率化されます。たとえば、自動化ツールを使えば、データ入力や集計作業が瞬時に完了し、従業員は創造的な仕事に集中できるようになります。
また、クラウドサービスの活用で、情報共有を円滑に進めることも可能です。その結果、チーム間の連携が強化され、プロジェクトの進行速度が上がるでしょう。さらに、AIを活用した予測分析により、的確な意思決定もできるでしょう。これらの要素が組み合わさり、企業全体の生産性が向上します。
グローバル展開
ICTの発展により、世界中の市場にアクセスしやすくなりました。オンラインプラットフォームを利用すれば、海外の顧客とも簡単につながれます。言語の壁も、翻訳ツールの進化で低くなっています。
また、先述したクラウドサービスを使えば、世界中のどこからでも業務が可能です。これにより、時差を活用した24時間体制の運営も実現できます。さらに、ビデオ会議システムで、海外拠点とのコミュニケーションも円滑になります。
イノベーションの促進
ICTは、新しいアイデアの創出と実現を加速させます。たとえば、3Dプリンターを使えば、製品プロトタイプの作成が迅速化され、製品開発サイクルが短縮につながります。
また、ビッグデータ分析により、顧客ニーズの深い理解が可能になります。その分析をもとに、革新的な製品やサービスを生み出せるでしょう。さらに、オープンイノベーションプラットフォームを通じて、外部の知恵を取り入れやすくなります。
顧客体験の向上
ICTの活用で、顧客満足度を大きく高められます。たとえば、AIチャットボットを導入すると、24時間365日の顧客対応が可能です。そうすると、顧客の疑問にすぐに答えられるようになります。
また、ビッグデータ分析を活用すれば、個々の顧客ニーズに合わせたサービス提供が可能です。さらに、VRやARなどの技術で、製品の仮想体験を提供できます。オンラインとオフラインを融合したシームレスな購買体験も実現できるでしょう。
なお、AIについては、次の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
主要産業におけるICT成功事例
ここからは、主要産業におけるICTの成功事例をご紹介します。
- ダイキン工業株式会社
- 株式会社LIXIL
- 株式会社小坂田建設
それぞれの企業のICTへの取り組みを確認していきましょう。
ダイキン工業株式会社(空調機器の製造・販売)
ダイキン工業は、空調機器の製造・販売を行うグローバル企業です。特に環境に配慮した製品開発や省エネ技術に強みを持っています。近年はAIとIoTを活用した革新的な空調ソリューションに注力しています。
- AIとIoTを活用した空調システムの開発と導入
- 1500人のAI人材育成を目指した教育プログラムの実施
- 大学との連携による専門知識の社内普及
- 非接触センサ技術を活用した異常検知システムの開発
ダイキン工業は、先進技術を積極的に取り入れ、空調事業の高度化を進めています。AIとIoTを活用した空調システムでは、室内環境をリアルタイムで分析し、最適な温度・湿度管理を実現しています。
また、AI人材育成プログラムは、社員が技術革新に対応できるよう支援する取り組みです。さらに、大学との連携により最新技術を取り入れることで、競争力を強化しています。化学プラントでの異常検知システムも、生産現場の安全性と効率性向上にもつなげています。
参考:DAIKIN
株式会社LIXIL(住宅設備機器や建材の製造・販売)
株式会社LIXILは、住宅設備機器や建材の製造・販売を行う企業です。特に水回りやトイレなどの製品で知られています。顧客体験(CX)と従業員体験(EX)の向上に注力し、ICT技術を活用しています。
- AI音声認識を活用したオンラインショールームの導入
- 3D見積もりシステムによる顧客体験の向上
- 自動音声認識技術によるコールセンター業務の効率化
- 生成AI技術「LIXIL Ai Portal」の導入
- 「LIXIL Data Platform(LDP)」によるデータ一元管理
LIXILは、顧客体験(CX)と従業員体験(EX)の向上に注力しています。AI音声認識技術を活用したオンラインショールームでは、来店せずに商品の詳細確認が可能となり、顧客の利便性が向上しました。
また、3D見積もりシステムは視覚的な情報提供により購買意欲を高めています。コールセンターでは、自動音声認識技術が応対時間短縮と効率化を実現しました。さらに、「LIXIL Ai Portal」や「LIXIL Data Platform」によって情報管理が統合され、迅速な意思決定が可能になっています。
参考:LIXIL
株式会社小坂田建設(土木工事や建設業務)
株式会社小坂田建設は、日本国内で土木工事や建設業務を行う中小企業です。地域密着型のサービス提供と高い技術力が特徴です。同社はICTの導入によって業務効率化を図っています。
- わずか2日で「車両・建機点検アプリ」を作成・導入
- 紙ベースだった点検作業のデジタル化
- 点検データの効率的な管理と共有
- 社員の点検意識向上による故障予防
小坂田建設は、中小企業ならではの迅速なICT導入で成果を上げています。「車両・建機点検アプリ」の導入により、紙で行っていた点検作業がデジタル化されました。これにより、データ入力や管理が効率化されただけでなく、ミスも減少しています。
ほかにもデータ共有が容易になったことで車両や建機の状態把握が迅速化し、適切なメンテナンスが可能になりました。さらに、この取り組みは社員の意識改革にもつながり、故障予防や修理コスト削減という形で企業全体に利益をもたらしています。
参考:Platio
ICT導入における課題と対策
ICT導入には、主に3つの課題があります。
まず、セキュリティリスクへの対応が必要です。情報漏洩や不正アクセスを防ぐため、最新のセキュリティ対策を講じる必要があります。定期的なソフトウェア更新や従業員教育も効果的でしょう。
次に人材育成と教育が不可欠です。ICTスキルを持つ人材を育成し、全社的なデジタルリテラシーを高めることが求められます。外部研修の活用や社内勉強会の開催が有効な手段となります。
最後にデジタルデバイドへの配慮も忘れてはいけません。年齢や環境による技術格差を埋めるため、使いやすいインターフェースの採用や丁寧なサポート体制の構築が大切です。これらの課題に適切に対応することで、ICT導入の効果を最大限に引き出せるでしょう。
ICTのまとめ
ICTは、業務効率化や新たな価値の創出を可能にします。本記事では、ICTの基本的な役割から具体的な活用例、さらに主要企業の成功事例を紹介しました。
また、導入時の課題とその対策についても解説しました。これらを通じて、ICTがビジネスにもたらす可能性を具体的にイメージし、導入を進めてみてください。