Unityはゲーム開発やリアルタイム3D制作を行うのに便利なツールです。最新版としてリリースされたUnity6.2Betaには生成AIツール「Unity AI」(最新リリース以前のモデルは「Muse」「Sentis」)でクリエイティブかつ効率的な開発が可能になりました。
本記事では生成AIとは何か、Unity AIで何が実現できるのか?をご紹介します。
生成AIとは

生成AI(Generative AI)はオリジナルの画像、動画、テキスト、音声など多様な形式のデータを自動的に生成する技術です。生成AIは事前に収集・分析した膨大なデータを学習し、新たなコンテンツを生成できます。
近年、生成AIは世界中で注目され、テキスト生成や画像生成などクリエイティブな分野で活用されています。生成AIの基本的な仕組みとしてはディープラーニング(深層学習)を活用しています。ディープラーニングは、膨大なデータから特有の傾向を抽出し、新たなアイデアを生み出す技術です。
例えば、テキスト生成AIはさまざまな文章を学習し、単語の意味やつながりを認識して新たなテキストを生成します。従来のAIと生成AIとの違いは、生成AIが「クリエイティビティ(創造性)」を持っている点です。
従来のAIは予測や解決策提示に限られていましたが、生成AIはディープラーニングで学習したデータをもとに新たなコンテンツを生み出せます。
生成AIとは何かについては以下の記事が参考になります。
統合型AIツール「Unity AI」とは
Unityの2025年5月リリースとなった、「Unity 6.2Beta」では、これまでの「Unity Muse」・「Unitu Sentis」に代わる統合型AIツール「Unity AI」が搭載されました。
Unity AIの料金
Unity AIは2025年6月時点では期間が発表されていませんが、Unity6.2 のBeta期間中は完全無料で利用できます。
Unity AIの機能
Unity AIは以下3つの機能で構成されるAIツールです。
公式操作マニュアル:Unity Documentation
- アシスタント(旧Muse Chat)
- ジェネレータ(旧Muse)
- 推論エンジン(旧Sentis)
それぞれどのようなことができるか、詳しく見ていきましょう。
Unity AI機能①:アシスタント
アシスタントは以下3つの操作モードをサポートし、タスク自動化・コード生成・プロジェクト管理アシスタントをこなす機能を備えています。
| モード | 概要 | 起動方法 |
|---|---|---|
| /askモード | チャットで回答提供・プロジェクト詳細情報提供など | 「+ チャット」を選択 |
| /runモード | 機能スクリプトを生成作業の自動化を可能にするほか、 コードのエラー検証・タスクの実行も行う |
アシスタントメニュー「/run」を選択 |
| /codeモード | Unity APIと対話可能なC#コードスニペットの 生成・検証・コンパイルができる |
アシスタントメニュー「/code」を選択 |
Unity AI機能②:ジェネレータ
ジェネレーターはテキストから、以下のAIアセットの生成が可能なツールセットです。
- スプライト:ゲーム内で使用する最適化された2D画像を生成
- テクスチャ2D:ゲームデザインにあわせて調整可能なテクスチャ2Dを生成
- サウンド:テキストもしくはサウンドデータからオーディオクリップを生成
- アニメーション:テキスト・動画からアニメーションクリップを生成
- マテリアル:テキストもしくは画像から3Dのリアルなオブジェクトマテリアルを生成
マテリアルジェネレーターは物理ベースレンダリング(PBR)をサポートしており、光・環境条件設定も忠実にリアルに再現できます。
Unity AI機能③:推論エンジン
推論エンジン(Inference Engine)はトレーニング済みのニューラルネットワークをUnityにインポートし、自分の端末でAI処理ができる機能です。
利用するには、Unityパッケージマネージャーからインストールが必要ですが、手順は簡単。機能を活用する際には以下の大まかな流れを参考にしてください。
- スクリプトの先頭「InferenceEngine」の利用を宣言
- ONNXモデルをUnityにインポート
- Tensorを作成(モデルの入力)
- Worker(推論エンジン)を作成
- WorkerをTensorと紐づけScheduleする
- モデルから出力データを取得する
【旧AIツール】「Unity Muse」とは

前章でご紹介したUnity Museは、AIで創造の可能性を解き放つプラットフォームです。リアルタイムの3Dアプリケーションやゲーム、デジタルツインなどを制作する際に、テキストプロンプトやスケッチなどの自然な入力を使用して、Unityエディター内でさまざまなアセットを生成できます。
セミナー名 Unity基礎セミナー 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 41,800円〜 開催期間 2日間 受講形式 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング
Museの機能
Unity Museには主に以下の機能があります。
テクスチャ生成
Unityエディター内でプロンプトや画像、手描きの図などの自然な入力によって、ゲームで使えるスタイルのテクスチャを手軽に生成できます。
スプライト生成
2Dアートを直接生成できます。単純なプロンプトを入力するだけで、調整してシーンに組み込めるスプライトが複数個、すぐに生成されます。
チャット
会話型のAIチャットを通じて、プロジェクトの問題を解決したり、アイデアを得たり、使えるコードを生成したりできます。
アニメーション生成
テキストプロンプトだけでヒューマノイドキャラクターをアニメーションさせることができます。
動作設定
キャラクターのインタラクションを簡単に設定できます。
ユースケース
Unityは幅広いユースケースで活用されています。以下がUnityの主なユースケースです。
ゲーム開発
Unityはゲーム制作において最も一般的に使用されるプラットフォームです。コンソールゲーム、PCゲーム、モバイルゲーム、AR/VRゲームなど、さまざまなジャンルで利用されています。
建築・設計
Unityは建築や設計分野でも活用されています。建物の3Dモデリング、シミュレーション、仮想ツアーなどに使用されます。
エンターテインメント業界
映画やアニメーション制作にもUnityが利用されています。リアルタイムレンダリング技術を活用して映像制作を効率化します。
自動車業界
Unityは自動車のシミュレーションやトレーニングにも応用されています。運転シミュレーターや自動車デザインの可視化に活用されます。
教育
Unityは教育分野でも利用されており、プログラミングやゲーム制作の学習に役立ちます。
【旧AIツール】「Unity Sentis」とは
Unity Sentisは、Unityのランタイム環境でAIモデルを活用するためのプラットフォームです。
Sentisの機能
Unity Sentisの主な機能・特徴には以下があります。
AIモデルの統合
Unity Sentisは、Unityゲームやアプリにサードパーティ製のAIモデルをインポートして実行できるフレームワークです。ONNXファイル規格を使用してモデルを統合し、新しいゲームプレイ体験を構築できます。
柔軟性の高いAIモデル実装
Sentisでは音声認識などのAIモデル実装が可能です。モデルのカスタマイズもサポートしています。
エンドユーザーデバイスでの高いパフォーマンス
クラウドではなくエンドユーザーデバイスの演算能力を活用するため、クラウドインフラストラクチャやネットワーク遅延の問題を回避できます。
マルチプラットフォーム対応
モバイルからPCなど、Unityがサポートするプラットフォーム全てにおいて連携できます。
ユースケース
前章ではUnityの機能を紹介してきました。以下は、Sentisのユースケースのいくつかです。
物体認識
ゲーム内またはデバイス上のカメラで物体を検出、分類、セグメント化します。
スタイル変換
任意のテーマでシーンにビジュアルエフェクトを追加します。これにより、プロジェクト内でコンテンツをスケールでき、イテレーションを減らすことができます。
手書き検出
手書きの数字・文字・記号を検出し、ゲームプレイに反映します。
物体認識
ゲーム内またはデバイス上のカメラで物体を検出、分類、セグメント化します。
スタイル変換
任意のテーマでシーンにビジュアルエフェクトを追加します。
手書き検出
手書きの数字、文字、記号を認識し、独特なインタラクションが可能です。
画像のアップスケーリング
低解像度の画像をアップスケールして運用レベルの品質にすることができます。
音声認識
機械学習言語モデルを使用してライブ音声をゲーム内テキストに変換します。
スマートNPC
プレイヤーとNPCとの意味のあるインタラクションが可能です。
Unityのマーケットプレイス「AI Hub」とは

Unityのマーケットプレイス「AI Hub」は、ゲーム開発者向けのAIツールを集約した場所です。AI開発やゲームプレイに役立つソリューションが提供されています。プロ仕様のUnity公認ソリューションやコミュニティによって構築されたソリューション、最新のAIテクノロジーを簡単に発見し、活用できます。
| Convai | ゲームや仮想世界アプリケーションのキャラクターに人間らしい会話能力を持たせるプラットフォーム |
| modl.ai | ゲーム開発者向けのAI技術を提供するプラットフォーム |
| Inworld AI | 強力なクロスプラットフォームの仮想キャラクター統合プラグイン |
| Layer AI | Unityのアセットストアで注目されているAIエンジン |
| Leonardo ai | 3Dモデルや2Dアートを生成するための最先端のテクスチャリングおよび2D画像生成ソリューション |
Convai
Convaiは、ゲームや仮想世界アプリケーションのキャラクターに人間らしい会話能力を持たせるプラットフォームです。以下は、Convaiの特徴とユースケースです。
キャラクターの会話能力
Convaiを使用して、キャラクターのバックストーリー、声、専門知識を設定し、ゲームエンジン内のNPCアセットと接続できます。
無制限の知識
Convaiは大規模言語モデルの「幻覚」問題に対処し、キャラクターの知識ベースを追加して正確な応答を保証します。
環境認識とアクション
キャラクターはシーン内のオブジェクトやエンティティを認識し、コマンドやリクエストに基づいてアクションを実行できます。
modl.ai
modl.aiはゲーム開発者向けのAI技術を提供するプラットフォームです。このツールは、ゲームのテスト、バランス調整、コンテンツ生成など、ゲーム開発のさまざまなフェーズでの作業を効率化し、質を向上させることを目的としています。
Inworld AI
Inworld AI Unity SDKは、強力なクロスプラットフォームの仮想キャラクター統合プラグインで、Unityシーンに簡単に仮想キャラクターを追加し、それらとコミュニケーションできます。
このSDKはAI駆動のキャラクターをUnityシーンに簡単に統合できるため、ゲーム開発者にとって非常に便利です。Inworld AIのキャラクターをプロジェクトにドラッグ&ドロップするだけで、AIキャラクターをシーンに追加できます。
Layer AI
Layer AIはUnityのアセットストアで注目されているAIエンジンです。ゲーム開発者に革新的なAIと機械学習を提供し、テストと開発を効率化します。具体的にはmodl:testという自動化されたQAツールを通じて、ゲームテストを拡張し、開発者の負担を軽減します。Unityのアセットモデレーターによって審査されたこのソリューションは、高評価を受けています。
またLayer AIは、ゲームアートの制作においても優れた成果を上げています。以下はLayer AIの特徴です。
アートスタイルに合ったクリエイティビティ: Layer AIは、既存のアートスタイルからヒントを得て、プロフェッショナルなゲームアセットの無限のパイプラインを生成します。
リアルなコミック、ピクセルアートなどの多様性: Layer AIは、さまざまなアートスタイルに適応可能で、ゲーム開発者に柔軟性を提供します。
プロダクションレディなアセット: スタイルの一貫性を保ちつつ、プロダクションに適したアセットを生成します。
Leonardo ai
Leonardo aiは3Dモデルや2Dアートを生成するための最先端のテクスチャリングおよび2D画像生成ソリューションです。
Leonardo aiを使用することで、高品質な2Dアセットやテクスチャを作成できるだけでなく、3DモデルのフルUVテクスチャーマップを簡単に生成することも可能です。クリエイターにとって非常に便利なツールと言えます。
Unityの生成AIツールで実現できることまとめ
ゲーム開発や3D制作を行うUnityには、生成AIツールとしてUnity、Sentisが搭載されています。Museはアニメーション作成、スプライト生成、テクスチャ作成機能を持ち、SentisはAIモデルの実装や統合機能を持ちます。
Unityを学習するのにおすすめなのが「Unity基礎セミナー」です。
未経験からでも短期間で基礎からUnityのマスターになるまで、実践的なスキルを学ぶことができます。
最新版統合型AIツール「Unity AI」、旧バージョンでのMuse・Sentisといった生成AIツールを活用すると、より効率よく最適なUnityの活用が実現できるでしょう。