高度情報処理技術者試験は、IT業界でのキャリアを築くために重要な資格ですが、その試験内容や取得するメリットは一体どのようなものなのか、気になる方は多いでしょう。
情報技術の進化に伴い、IT分野での専門知識とスキルがますます求められる中、高度情報処理技術者試験はその高度な技術力を証明するための有力な手段となっています。
本記事では高度情報処理技術者試験について詳しく解説し、その試験を受けるメリットや取得するためのステップについてもご紹介します。高度情報処理技術者試験を受ける際の参考にしてください。
高度情報処理技術者試験とは?
高度情報処理技術者試験とは、IPAが運営する資格の総称のことです。その名のとおり高度なIT技術と知識を図る内容となっており、資格の種類は全部で9種類。具体的な種類は、
- ITストラテジスト
- システムアーキテクト
- プロジェクトマネージャ
- ネットワークスペシャリスト
- データベーススペシャリスト
- エンベデッドシステムスペシャリスト
- ITサービスマネージャ
- システム監査技術者
- 情報処理安全確保支援士
となっています。それぞれの試験は対象分野に特化した深い知識と実務経験を問う内容となっており、試験に合格することでその分野での専門的な能力を認められます。
高度情報処理技術者試験に該当する試験
ここでは、高度情報処理技術者試験に該当する試験を、それぞれご紹介します。
試験名 | 目的 | 合格率 | 実施回数 |
ITストラテジスト | 企業のIT戦略を立案・推進し、経営に貢献する高度な専門知識を持つ人材を育成 | 約14~15% | 年2回 |
システムアーキテクト | システムの設計・構築に関する高度な専門知識と技術を持つ人材を育成 | 約14~15% | 年2回 |
プロジェクトマネージャ | プロジェクトの計画・実行・管理に関する高度な専門知識とスキルを持つ人材を育成 | 約13~14% | 年2回 |
ネットワークスペシャリスト | ネットワーク技術の設計・構築・運用に関する高度な専門知識を持つ人材を育成 | 約11~13% | 年1回 |
データベーススペシャリスト | データベースの設計・構築・運用に関する高度な専門知識を持つ人材を育成 | 約13~14% | 年1回 |
エンベデッドシステムスペシャリスト | 組み込みシステムの設計・開発に関する高度な専門知識と技術を持つ人材を育成 | 約14% | 年1回 |
ITサービスマネージャ | ITサービスの提供・管理に関する高度な専門知識を持つ人材を育成 | 約11~13% | 年1回 |
システム監査技術者 | システムの監査・評価に関する高度な専門知識を持つ人材を育成 | 約11~13% | 年1回 |
情報処理安全確保支援士 | 情報セキュリティの確保に関する高度な専門知識と技術を持つ人材を育成 | 約12~14% | 年2回 |
試験①ITストラテジスト
ITストラテジストは企業の経営戦略とIT戦略を統合し、ITの導入・活用によって事業価値を最大化する専門家を認定する国家資格です。経営環境の分析、IT投資の評価と管理、プロジェクトマネジメントなど、広範な知識とスキルを必要とします。
なおAI研究所の「データサイエンティストセミナー」では、ITストラテジストおよび高度情報処理技術者試験に必要なデータ取り扱いやモダンなクラウド技術などを学ぶことができますので、ぜひ以下のリンクから詳細をご覧ください。
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試験②システムアーキテクト
システムアーキテクトは情報システムの設計・構築を専門とする国家資格です。システム要件定義、設計や開発、テスト、運用、保守までの一連のプロセスを管理すること、かつシステムの最適化と品質向上を図るための知識とスキルが必要になります。
試験③プロジェクトマネージャ
プロジェクトマネージャは、情報処理技術者試験の一つで、プロジェクト管理の専門知識を持ち、リーダーシップを発揮してプロジェクトを成功に導く能力を証明するものです。
更新の必要がない点は大きなメリットになりますが、進化の早い業界のため継続的な教育と実務経験が必要になります。
試験④ネットワークスペシャリスト
情報処理技術者試験の一つで、ネットワーク技術に関する高度な知識とスキルを図るものです。受験対象者は、ネットワークの設計や運用に携わるエンジニアや管理者で、特に実務経験があることが推奨されます。
資格取得者は、企業のネットワークインフラの信頼性と効率性を向上させ、セキュリティリスクを軽減するための重要な役割を果たすことが一般的です。高度情報処理技術者試験の中でも難易度が高く、IT業界のベテランや有識者でも一度で取得するのは難しいでしょう。
試験⑤データベーススペシャリスト
データベーススペシャリストは、データベース技術に関する高度な知識とスキルを図ります。データベースのアーキテクチャやデータモデリング、SQLの利用など、幅広い領域が出題範囲として網羅されています。
受験対象者は主にデータベースエンジニアやデータベース管理者(DBA)であり、特に実務経験があることが望ましいでしょう。なお、データベーススペシャリストについては以下の記事でも詳しく紹介しています。
試験⑥エンベデッドシステムスペシャリスト
エンベデッドシステムスペシャリストは、組み込みシステムの設計、開発、運用に関する高度な知識と技能を評価する試験です。
資格取得者は、家電、自動車、医療機器などの各種組み込み機器の開発において重要な役割を果たし、システムの信頼性と効率性を向上させることが期待されます。
試験⑦ITサービスマネージャ
ITサービスマネージャは主に情報技術サービスの提供に携わるプロフェッショナルやマネージャーを対象としています。試験内容には、ITサービスマネジメントの基本原則、サービスデリバリープロセス、顧客満足度向上の戦略、サービス品質管理などが含まれます。
ITサービスマネージャとしての専門知識とスキルを証明し、組織内でのリーダーシップを発揮するための一助になることは間違いないでしょう。
試験⑧システム監査技術者
システム監査技術者は情報システムの監査に関するスキルを図る内容で、主に情報システムの監査業務に従事する専門家を対象としています。
民間資格とは異なり数年ごとの資格の更新が必要ない点も魅力ではありますが、入念な試験対策を行わないと不合格になる可能性が高い難関資格です。なお、セキュリティ関連の資格「情報セキュリティマネジメント」については、以下の記事が参考になるのでぜひご覧ください。
試験⑨情報処理安全確保支援士
情報処理安全確保支援士は、情報セキュリティ分野における高度な専門知識と技術を持つプロフェッショナルを認定する国家資格です。
情報セキュリティ管理をはじめ、セキュリティポリシー策定やセキュリティ対策、インシデント対応など、広範な知識とスキルを必要とします。
高度情報処理技術者試験で一番簡単な資格は?
合格率だけで見ればエンベデッドシステムスペシャリスト、ITストラテジスト、システムアーキテクトが比較的高いです。とはいえ事前知識や経験、向き不向きで変わってくるので一概には言えません。
「いちばん簡単な資格をとろう」と意気込むよりも「その資格を使ってどういうキャリアを目指すか」にフォーカスすることをおすすめします。
高度情報処理技術者試験に挑戦するメリット
ここでは高度情報処理技術者試験に挑戦するメリットを、以下のとおりご紹介します。
- さまざまなジャンルのIT知識を深堀りできる
- 収入が上がりやすくなる
- 知名度が高く転職のIT市場価値が上がる
メリット①さまざまなジャンルのIT知識を深堀りできる
高度情報処理技術者試験に挑戦するメリットの一つは、さまざまなジャンルのIT知識を深掘りできることです。この試験はネットワーク、データベース、セキュリティなど、幅広いIT分野にわたる高度な知識が問われるからです。
挑戦することで総合的なITリテラシーを向上させられるだけでなく、実務での問題解決能力が高まったり、IT業界でのキャリアアップに繋がるでしょう。
メリット②収入が上がりやすくなる
高度情報処理技術者試験に挑戦するもう一つのメリットは、収入が上がりやすくなることです。取得することで専門的なスキルと知識を持つ証明となり、企業からの評価が高くなるためです。
結果として高度な業務を任される機会が増え、責任のあるポジションに昇進する可能性が高くなり、年収アップにつながります。
メリット③知名度が高く転職のIT市場価値が上がる
高度情報処理技術者試験に挑戦するメリットの一つは、知名度が高く転職市場でのIT市場価値が上がることです。歴史のある資格であることから多くの企業に認知されており、持っていることで専門知識や技術力を証明できるからです。
結果として転職時に即戦力として評価されることが多くなり、より良い条件での就職やキャリアアップが期待できます。
高度情報処理技術者試験取得者のおおよその年収相場
高度情報処理技術者試験取得者のおおよその年収相場は、年齢や経験、もちろん企業によっても大きく異なるので一概には言えません。おおよその平均をまとめると、以下のようになります。
試験名 | 平均年収 |
ITストラテジスト | 約600万〜700万円 |
システムアーキテクト | 約700万〜750万円 |
プロジェクトマネージャ | 約680万〜700万円 |
ネットワークスペシャリスト | 約600万〜700万円 |
データベーススペシャリスト | 約500万〜750万円 |
エンベデッドシステムスペシャリスト | 約600万〜700万円 |
ITサービスマネージャ | 約500万〜800万円 |
システム監査技術者 | 約600万〜700万円 |
情報処理安全確保支援士 | 約600万〜900万円 |
目安ではありますが、やはり専門性と難易度が極めて高い資格ばかりなので、約600万円から900万円といった年収となります。日本人のサラリーマンの平均年収が約450~500万円なので、十分高年収と言えるでしょう。
高度情報処理技術者試験に関するよくある質問
ここでは、高度情報処理技術者試験に関するよくある質問を紹介します。
高度情報処理技術者試験の難易度は?
9ついずれの試験も経験者向けなので、非常に難しいのが現状です。合格率はおおよそ以下のようになっています。
試験名 | 合格率 |
ITストラテジスト | 約14~15% |
システムアーキテクト | 約14~15% |
プロジェクトマネージャ | 約13~14% |
ネットワークスペシャリスト | 約11~13% |
データベーススペシャリスト | 約13~14% |
エンベデッドシステムスペシャリスト | 約14% |
ITサービスマネージャ | 約11~13% |
システム監査技術者 | 約11~13% |
情報処理安全確保支援士 | 約12~14% |
高度情報処理技術者の最年少合格者は?
高度情報処理技術者試験の最年少合格者は、8歳の小学生です。
令和5年4月、8歳(小学3年生)の若さで「基本情報技術者試験」と「情報セキュリティマネジメント試験」の両方に合格した方が現れました。それにより、これまでの最年少記録である9歳を上回りました。
参考:IPA
高度情報処理技術者試験まとめ
高度情報処理技術者試験には、情報セキュリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、システムアーキテクト、データベーススペシャリストなど、様々な資格があります。
これらに合格することで、高度な情報処理技術や管理能力を持っていることが証明できるでしょう。
加えて高度な情報処理技術者としてのスキルや知識を活かして、新たな分野やプロジェクトに挑戦することが可能となります。
高度情報処理技術者試験は、自身のキャリアをさらに発展させるための重要な一歩となるので、難関ではあるものの挑戦する価値は大いにあるでしょう。