人工知能は身近な場所で使われており、人々の暮らしを豊かにしてくれるシステムです。私たちが使用しているAIは特化型人工知能と呼ばれていますが、その進化系「汎用型人工知能」というシステムの開発が世界で進められています。
本記事では、汎用型人工知能の特徴や学習方法について紹介します。特化型人工知能との違いや汎用型人工知能の現在と未来などについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
汎用型人工知能とは?
汎用型人工知能(AGI)とは、非常に高い知識を持っているAIです。汎用性が高く人間に近い感情や思考回路をもつ人工知能として注目を集めています。汎用型人工知能は「嬉しい」「楽しい」「悲しい」「怒り」といった人がもつ感情を理解し、表現することが可能です。
また、人の感情を読み取り、それに対してAIが自分で考え行動を起こします。下記では汎用型人工知能について詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
類似AIとの違い
AIには3つの主要カテゴリがあり、それぞれに特徴や役割の違いがあります。ここでは、汎用型人工知能を中心にその違いについて紹介します。
- 汎用型人工知能と特化型人工知能の違い
- 人工超知能(ASI)との違い
上記内容をそれぞれ見ていきましょう。
汎用型人工知能と特化型人工知能の違い
現在人工知能には、汎用型人工知能(AGI)と特化型人工知能(ANI)があります。
できること | 分かりやすい例 | 実用化しているか | |
汎用型人工知能 | AIが意思を持ち、人間と同じような行動ができる |
|
していない(2024年1月現在) |
特化型人工知能 | 意思は持たないが既存データに沿って行動ができる |
|
している |
汎用型人工知能は人間と同じような知能をもち、行動ができる人工知能です。コンピュータープログラムに存在しないデータもAIが自分で学習し、答えを導きだしてくれます。アニメのキャラクター「ドラえもん」が汎用型人工知能に近い存在と言われています。
特化型人工知能は、特定の場所に特化した人工知能です。音声認識機能や翻訳機能、文字起こしなど、さまざまな場所で使われています。
人工超知能(ASI)との違い
人工超知能(ASI)とは、人の知識をはるかに超える能力を持った人工知能のことを言います。汎用型人工知能が進化したら人工超知能になる可能性があると言われています。
人工超知能は人が思いつかないような問題を解決する能力やクリエイティブ活動など、さまざまな分野で重宝されるでしょう。しかし、汎用型人工知能がまだ実現していないので、人工超知能の誕生には時間がかかります。
汎用型人工知能の特徴
汎用型人工知能が実際に使われると、さまざまなところで成果を残すことができます。AIが自ら知識をインプットし、応用できるように処理、決断をしてくれます。私たちの生活はもちろん、ビジネスシーンでも活用してくれるでしょう。
汎用型人工知能が実際にできることをまとめました。
- 人と同じような知能を持っている
- マルチタスクに対応
- 抽象的な思考ができる
上記内容をそれぞれ見ていきましょう。
人と同じような知能を持っている
汎用型人工知能は、人と同じような知識を持つAIと言われており、人間と同等の感情を出しながらコミュニケーションが行えます。仕事をしている人の表情や顔色を読み取って、それを「癒すためにはどうしたら良いのか」と考え、行動に移してくれます。
人が落ち込んでいたら、慰める言葉を言ってくれたり、温かい飲み物を提供してくれるかもしれません。
ビジネスシーンでは、サポートセンターの業務に汎用型人工知能を使った場合、相手の感情を読み取って適切な対応をしてくれます。人間スタッフとして、丁寧で心地よい問い合わせ対応が可能になる時代がくるのかもしれません。
マルチタスクに対応
汎用型人工知能は、人のように多くの知識とスキルを持ち、さまざまな決断を自身で行います。汎用型人工知能は過去の経験を参考に学習を重ねて、柔軟にタスクをこなすことが可能です。さらに、1度に違う種類のタスクを柔軟に対応できるため、人手不足の解消に繋がります。
抽象的な思考ができる
汎用型人工知能は、過去のデータや大量の知識を活用して抽象的な考え方ができます。イラストやデザイン、音楽など抽象的な思考が必要な作品のアイデアを考えたり、新しい商品の開発アイデアを発表したりとさまざまな場所で重宝されます。
汎用型人工知能の必要性
今、世界ではさまざまな技術の発展や変化が起きており、企業はその変化に対応しなければなりません。目まぐるしい時代の中で、特化型人工知能を使用している企業は、世界が変化するたびにAIをアップデートさせる必要があります。
しかし、人工知能のアップデートは多くの手間とコストが発生し、膨大な負担がかかります。人工知能が自身で考えて行動してくれれば、人間に負担がかかりません。汎用型人工知能が実現すれば、人工知能にデータを取り込まなくても自身で社会の変化に対応し、最適な正解を導き出してくれます。
今、日本では、DX推進が2025年までに進まないと経済で大きな損失を招くと言われています。また、汎用型人工知能は、少子高齢化が進んでいて、働く人の人口が減少していることで起こる「2040年問題」の解決策になると期待されています。
汎用型人工知能の学習方法
汎用型人工知能の学習方法は大きく分けて3つあります。
- 認知アーキテクチャ
- 認知ロボティクス
- 機械学習(ディープラーニング)
上記内容をそれぞれ見ていきましょう。
認知アーキテクチャ
認知アーキテクチャとは、人間が認知している思考回路を学習させる研究のことをいいます。人工知能が与えられた情報を適切に解釈し、人間が欲しい結論に到達するためのシステムを構築してくれます。認知アーキテクチャを実際に使えるようになると、人工知能はまるで人間かのように感情的な考え方ができるようになるでしょう。
認知アーキテクチャの種類は3つあります。
- 分散表象的
- 記号主義的
- 上記2つを折衷したもの
分散表象的アーキテクチャは、1つの単語の意味をベクトルで表現します。記号主義的アーキテクチャはプログラミング言語を使って人工知能に知識を与えます。また、分散表象的と記号主義的の両方の良いところをくみ取って、人工知能に覚えさせることも可能です。
認知ロボティクス
認知ロボティクスは、ロボットを使用して人工知能を認知させる研究をいいます。認知ロボティクスはすべてロボットの形をしているわけではありません。
認知ロボティクスには3つの種類があります。
- 記号創発ロボティクス
- 認知発達ロボティクス
- 社会的知能ロボティクス
記号創発ロボティクスは人の言葉を話してもらうために、ロボットに言語を覚えさせて人間らしい言葉を話してもらいます。認知発達ロボティクスは、小さい人や動物のところにロボットを置き、環境を学習させるシステムです。社会的知能ロボティクスは人の手振りや身振り、視線などを使って、人間とコミュニケーションが取れるようにします。
機械学習(ディープラーニング)
機械学習は、特化型人工知能でも使われますが、汎用型人工知能でも使用します。汎用型人工知能では、機械学習のほかにもディープラーニングと強化学習も一緒に使われます。
ディープラーニングは、入力層、構築層、出力層と3つの層でデータを分析し答えを導きだす機能です。それらを繰り返すことにより、高度な人工知能が完成します。強化学習は、人が人工知能にデータを渡し、それを参考に人間らしい行動や感情を学習するシステムです。
「強いAI」・「弱いAI」とは
人工知能には2つの種類があります。
- 強いAI
- 弱いAI
上記内容をそれぞれ見ていきましょう。
強いAI
強いAIとは人間に近い感情を持ちながら多くの情報を処理してくれるAIのことで、汎用型人工知能はそれに該当します。
強いAIはさまざまな物事を自身で学習し行動を重ねて、知識を増やしていきます。強いAIは人工知能自らが人間の感情を読み取り、一緒に笑ったり泣いたりする感情をもつ画期的な人工知能です。近年話題になっている「ChatGPT」は汎用型人工知能に近い機能といわれています。
下記では強いAIについてまとめているので、ぜひ参考にしてください。
弱いAI
弱いAIとは感情はありませんが、高い思考能力をもつ人工知能です。強いAIとは違い、機械学習やディープラーニングでの学習は可能ですが、感情が理解できないものは弱いAIに分類されます。人間と同じように行動することは難しいですが、能力は高いのでさまざまな企業で使われています。
汎用型人工知能の現在と未来
人工知能は日々研究し進化を続けています。汎用型人工知能は今度どのような働きをするのでしょうか。
- 汎用型人工知能の現在
- 汎用型人工知能の未来
上記内容を詳しく解説します。
汎用型人工知能の現在
汎用型人工知能はさまざまな企業や研究者が実現に向けて開発、研究を重ねています。しかし、現時点ではまだ汎用型人工知能は実現されていません。人間のような柔軟な対応や能力が実装できなかったり、判断力が上手くできないなど、汎用型人工知能を完全に実現するには多くの課題が残されています。
汎用型人工知能の未来
人工知能は「ChatGPT」を筆頭に、今後はより完璧な人工知能が開発されるのは間違いありません。
ChatGPTを作り出したOpenAI社のサム・アルトマン氏は、2023年2月24日に汎用人工知能についてのロードマップを公表しました。ロードマップには、「汎用型人工知能は人間よりも賢い人工知能であり、正しい研究、開発を行う必要がある」と明記しています。
汎用型人工知能は、人間の知能を使い、人を超えてさまざまな分野で活用できる時代が来るかもしれません。
ただし、人工知能自身が人間の知識、データを悪用する可能性があるので、それを防ぐための法律などが必要です。また、汎用型人工知能が人の能力を超えてしまうと、人間の働き場所がなくなるとも懸念されています。さまざまな問題と向き合い、人間は人工知能と共存していくことが求められます。
汎用型人工知能のまとめ
汎用型人工知能とは、人間と同じように理解し行動してくれる人工知能です。人間の感情や行動を読み取って、慰めたり一緒に笑ったりと、人間のような対応、行動をしてくれます。
汎用型人工知能が実現できれば、これまで人工知能ができなかった業務が行えるようになるので、ビジネス業界では生産性の上昇が期待できます。汎用型人工知能の研究や開発は常に続けられており、さまざまな場所で成果を生み出し始めています。今後も人工知能の行動に目が離せません。
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