情報技術の進化に伴い、高度情報処理技術者の需要は増加の一途を辿っています。高度情報処理技術者資格の取得によっってどのようなキャリアアップやスキルアップが期待できるのでしょうか?
本記事では高度情報処理技術者に焦点を当て、その種類や取得に向けた学習ステップについて詳しく解説します。高度情報処理技術者を目指す方や興味をお持ちの方にとって参考になる情報になるので、ぜひご一読いただければと思います。
高度情報処理技術者はIPAが認定する資格
高度情報処理技術者は、IPAが運営する9つの国家資格の総称です。いずれもIT分野の幅広い知識とノウハウが求められる内容となっており、非常に高い難易度を誇ります。
これらの資格は1970年代から運営されているため歴史の長い資格といえます。現代の管理職やベテランの層からの認知度も高いため、アピール材料としてうってつけです。
高度情報処理技術者は全部で9種類
高度情報処理技術者の種類をご紹介します。
高度情報処理技術者資格種類 | 試験内容・範囲 | 受験対象者 | 合格率 | 資格の有効性 |
情報処理安全確保支援士 |
など |
情報セキュリティの経験があるエンジニア | 約14~15% | 5年間(更新制) |
ITストラテジスト |
など |
システム戦略を立案・推進するリーダー層 | 約14~15% | 無期限 |
システムアーキテクト |
など |
システム開発の経験があるエンジニア | 約13~14% | 無期限 |
プロジェクトマネージャ |
など |
プロジェクト管理の経験があるプロジェクトマネージャ | 約11~13% | 無期限 |
ネットワークスペシャリスト |
など |
ネットワーク技術の経験があるエンジニア | 約13~14% | 無期限 |
データベーススペシャリスト |
など |
データベース技術の経験があるエンジニア | 約14% | 無期限 |
エンベデッドシステムスペシャリスト |
など |
組み込みシステムの経験があるエンジニア | 約11~13% | 無期限 |
ITサービスマネージャ |
など |
ITサービス管理の経験があるマネージャ | 約11~13% | 無期限 |
システム監査技術者 |
など |
システム監査の経験がある監査技術者 | 約12~14% | 無期限 |
種類①情報処理安全確保支援士
情報処理安全確保支援士は、情報セキュリティ分野の高度情報処理技術者資格です。受験対象者は主に、情報セキュリティの実務経験があるエンジニアや管理者です。
合格することで、セキュリティ分野における専門知識と技術力が証明され、企業や公共機関でのセキュリティ対策の策定・実施においてリーダーシップを発揮することが期待されるでしょう。なおAI研究所の「データサイエンティストセミナー」では、ビッグデータやクラウドの取り扱いなど、安全な情報処理に関する内容も取り扱っていますので、ぜひご検討ください。
データサイエンティストセミナーのスケジュール/お申し込みはこちらから
種類②ITストラテジスト
ITストラテジストは、企業や組織の経営戦略に基づいてIT戦略を立案・推進する専門家のための高度情報処理技術者資格です。経営戦略とITの整合性を図り、ビジネス価値最大化の計画策定、プロジェクト管理、ITガバナンス、リスク管理など、広範な知識とスキルが求められます。
種類③システムアーキテクト
システムアーキテクトはシステム全体の設計・構築を担当する専門家のための高度情報処理技術者資格です。システムの要件定義、基本や詳細設計、開発、テスト、運用に至るまでのプロセス全般をカバーしています。
資格取得者は業務の要件に基づいてシステムの仕様を決定し、適切な技術やツールを選定し、最適なシステムアーキテクチャの設計・実装の任務を任されるでしょう。
種類④プロジェクトマネージャ
プロジェクトマネージャは、ITプロジェクト全過程の管理のための知識とスキルを図る高度情報処理技術者資格です。試験範囲は、プロジェクト計画の立案、リソース管理、進捗管理、リスク管理、品質管理、コスト管理など、多岐にわたります。
プロジェクトマネジメントの専門家としての信頼性が高まり、キャリアの幅を広げることが可能になります。
種類⑤ネットワークスペシャリスト
ネットワークスペシャリスト試験も高度情報処理技術者資格の一つで、ネットワークの高度な知識と技術を評価します。試験内容はネットワークの設計・構築・運用などネットワーク全般となっています。
受験者の大半が実務経験者となっている割に、合格率は13%前後と非常に難関です。
種類⑥データベーススペシャリスト
データベーススペシャリストは情報処理技術者試験の一つで、データベースの設計、構築、運用、管理に必要な専門知識を持つ技術者を対象としています。
試験内容にはデータベースのアーキテクチャ、設計、SQL、パフォーマンスチューニング、セキュリティ、バックアップとリカバリなどが含まれます。
データベーススペシャリストについてもっと知りたい方は、以下の記事をご覧下さい。
種類⑦エンベデッドシステムスペシャリスト
情報処理技術者試験の一つで、主に組込みシステムの高度な知識とスキルを評価できる内容です。組込みシステムとは特定の機能を実行すべくハードウェアとソフトウェアが一体となったシステムを指し、家電製品や自動車、産業機器などに広く使われています。
取得者は高い専門性と技術力を持ち、複雑な組込みシステムの開発と保守において重要な役割を任されるでしょう。
種類⑧ITサービスマネージャ
ITサービスマネージャ試験は、情報技術サービスの提供における管理能力が問われる高度情報処理技術者資格で、ITサービスマネジメントの専門家としての能力を証明できます。
合格によって、ITサービスの効率性と効果性を向上させ、組織のビジネス目標に貢献できるでしょう。
種類⑨システム監査技術者
システム監査技術者試験は、情報システムの監査における専門知識や技術を図る高度情報処理技術者資格です。試験内容には、情報システム監査の基本的な考え方や手法、情報システムの運用状況やセキュリティ対策の評価方法、監査報告書の作成などが含まれます。
なお、セキュリティ関連の資格「情報セキュリティマネジメント」については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
高度情報処理技術者を習得するステップ
高度情報処理技術者を習得するステップを、以下のとおりご紹介します。
- 取りたい資格の書籍を買って学ぶ
- 過去問題集を解く
- 不明点のみインプット
- アウトプットを反復
ステップ①取りたい資格の書籍を買って学ぶ
まずは取りたい資格を決め、それの書籍を購入して学びましょう。高度情報処理技術者はいずれも認知度と需要が非常に大きな資格なので、書店やECサイトでかんたんに手に入ります。
それほど入念に読み込むよりも、「こういう概念があるんだな」「こういう知識が必要になるんだな」というざっくりとした理解で、次のステップに進みましょう。
ステップ②過去問題集を解く
書籍でひととおり学んだら、過去問題集を解くフェーズになります。最初はまったくわからず、全く合格点に届く見込みが見えないほど間違えたり、わからない部分に直面します。
しかし高度情報処理技術者資格の学習は分析と反復がキモです。まずはたくさん間違え、自分がわからない点を明確にしましょう。
ステップ③不明点のみインプット
過去問題集を解いたうえでわからない部分が明確になったら、その部分のみ集中的にインプットを行います。
このインプットでは書籍を用いるのもいいですし、インターネットや動画プラットフォームを使うのもおすすめです。
ステップ④アウトプットを反復
不明点の分析およびインプットを行ったら、また過去問題集を用いたアウトプットを行いましょう。これを繰り返すことで、しっかりと知識として定着します。
時間配分としては、インプットは3割、アウトプットを7割を意識しましょう。
なお、各試験の年収相場や難易度は以下の記事にて紹介しておりますので、ご確認くださいませ。
高度情報処理技術者取得後のキャリアパス
高度情報処理技術者取得後のキャリアパスには、以下のようなものがあります。
- システムアーキテクト
- プロジェクトマネージャー
- セキュリティエキスパート
- ITコンサルタント
- フリーランスエンジニア
それぞれ解説します。
キャリアパス①システムアーキテクト
高度情報処理技術者試験取得後のキャリアパスとして、システムアーキテクトが挙げられます。
システムアーキテクトは高度な設計スキルとプロジェクトマネジメント能力を活かし、クライアントのニーズに応じた最適なシステムアーキテクチャを提案・構築すます。
キャリアパス②プロジェクトマネージャー
高度情報処理技術者試験取得後のキャリアパスには、プロジェクトマネージャーもあります。
ITプロジェクトの全体管理を担う専門職であり、プロジェクトの計画、進行管理、リスク管理、品質管理などを統括し、チームをリードします。
キャリアパス③セキュリティエキスパート
セキュリティエキスパートも、高度情報処理技術者試験取得後のキャリアパスとして人気です。
情報セキュリティに特化した専門職で、企業内の情報セキュリティ対策を企画・実施し、サイバー攻撃からの防御、リスク管理、セキュリティポリシーの策定と運用を担当します。
キャリアパス④ITコンサルタント
ITコンサルタントも、高度情報処理技術者試験取得後のキャリアパスとして代表的です。
ITコンサルタントは主に企業のIT戦略の立案やシステム導入の支援、業務改善の提案を行う職業。クライアントのビジネスニーズを理解し、最適なITソリューションを提供します。
キャリアパス⑤フリーランスエンジニア
高度情報処理技術者試験取得後、フリーランスエンジニアとして活躍している方もいます。
フリーランスエンジニアは、自分のスキルと経験を活かして自由に働ける環境を選び、プロジェクトごとに業務委託として契約し仕事を行います。
IPAが設けている試験免除の条件とは?
高度情報処理技術者試験には、特定の条件いずれかをクリアすることで「午前試験の免除」が受けられる制度が存在します。
通常、高度情報処理技術者試験は「午前試験」と「午後試験」があり、両方受からないと合格はできません。これの午前試験を免除できるため、合格に大きく近づけるでしょう。
特定の条件とは、以下のとおりです。
- 「応用情報技術者試験」に合格
- いずれかの高度情報処理技術者試験、および支援士試験に合格
- いずれかの高度情報処理技術者試験、および支援士試験の午前I試験で基準点以上をとる
上記の応用情報技術者試験も難易度は高いものの、高度情報処理技術者試験に比べれば合格率は高いので、挑戦してみるのもいいでしょう。
高度情報処理技術者まとめ
高度情報処理技術者は情報処理技術者試験の最上位資格であり、高度な技術や知識を持つことを証明できるものです。取得のためには未経験から目指すよりも、一定の実務経験や研修を経てからの受験が賢明でしょう。
高度情報処理技術者の資格を持つことで、高度な情報処理技術や管理能力を身につけることができます。自己成長やキャリアアップの機会が広がるだけでなく、企業にとっても信頼できる技術者としての価値を高めることができるので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。