近年の急激な技術の発展に伴い、需要と市場規模を着実に大きくしているAI。いまやAIはビジネスおよび私生活において、身近どころか「なくてはならない存在」として認知されているといっても過言ではないでしょう。
そんなAIですが、ほとんどが「AIが根本的にできること」を創意工夫し、各シーンや用途に合わせて応用しているだけといえます。
今回の記事では「AIが基本的にできることとできないこと」をテーマに、活用事例やメリット、今後のAIの可能性について見ていきます。
そもそもAI(人工知能)とは?
AIとは、人間の脳の学習能力を再現したコンピューターの総称です。画像や音声、テキストなどあらゆるデータを解析し、学習・推論を行い、問題解決につなげてくれます。
ただ教授や研究者によって「何をもってAIなのか」の基準が異なることから、今のところ明確な定義は明確は決まっていません。なので「人間のように自分で考えて答えを導き出せるシステム」と考えて問題ないでしょう。
なお人工知能にの概要や事例については、以下の記事でもわかりやすく解説しています。
AI(人工知能)ができること
冒頭で述べた「人工知能が根本的にできること」とは、以下の4つです。
- 画像認識
- 音声認識
- 自然言語処理
- データ検索や共通点抽出
それぞれ、順を追って解説します。
画像認識
画像認識を技術をわかりやすくいうと、以下のようなものです。
- カメラおよびセンサーなどから得た画像や映像から情報を抽出・解析
- アップロードされた特定の画像から情報を抽出・解析
具体例を挙げるとスマートフォンの顔認証や自動運転技術、製造業の不良品検知や医療システムなどがあります。その他にも読み込ませた画像を認識し、それに近いオリジナル画像を作成してくれたり、自動で加工してくれるサービスも存在します。
絵の自動生成サイトに興味がある方は、以下の記事が参考になるのでぜひご覧ください。
音声認識
具体的に言うと「人間が話した内容を聞き取り、テキストデータに変換する技術」のことです。身近な例で例えるとスマホの音声アシスタントやスマートスピーカー、翻訳ツールや各種文字起こしサービスなどです。
音声をテキストデータとして変換することで、それに対する適切な返事や回答を行うことが可能になります。なお、音声認識については以下の記事でもくわしく紹介しています。
自然言語処理
音声認識の延長線上ではありますが、「自然言語処理」もAIの得意分野です。「自然言語」とは日本語や各外国語のことで、人類が普段から使っている言語のことを指します。
コンピューターは本来「0か1のみで表現されたコンピューター言語」しか認識・聞き取りできません。しかし自然言語処理技術が発展したことで、今では日本語や英語を難なく聞き取り、処理することが可能になっています。
データ検索や共通点抽出
「データ検索や共通点抽出」もAIの得意分野として挙げられます。
たとえばSNSやECサイトで、自分の趣味嗜好に沿ったコンテンツやお気に入りの商品が表示されることがあると思います。これは「レコメンド機能」といって、まさしくAIがデータを検索したり共通点を抽出することで実現しているのです。
それだけでなく「共通点抽出」の技術は製造業における不良品検知をはじめ、近年では防犯カメラの犯人特定などにも用いられています。
AI(人工知能)ができないこと
現時点のAIにはできないことももちろんあります。例を挙げると、主に以下のとおりです。
- まったく新しいコンテンツの創造
- 人の感性がものをいうクリエイティブ作業
- 人の気持ちの察知・共感
それぞれ見ていきましょう。
まったく新しいコンテンツの創造
まったく新しい革新的なコンテンツを作ることは不可能です。AIは大量のデータからパターンを学習し、それを元に新しいものを生成しているため、本質的には過去のデータからの予測や合成に過ぎないからです。
AIは人間のように創造性や直感をもつことができないので、独創的なアイデアやコンテンツを生み出すことは現時点ではまだ難しいでしょう。
人の感性がものをいうクリエイティブ作業
「人の感性がものをいうクリエイティブ作業」とはデザインや美術、アート、音楽といった類のものです。感性というものは個々の経験や背景、情熱に根ざしているところが多いため人間ですら再現するのは簡単ではありません。
AIは過去のデータから学習し生成するのは得意ですが、独自の感性や美学はもてないことから、まだまだ人間の創造性や直感は必要不可欠です。
人の気持ちの察知・共感
AIはあらゆる膨大なデータを数値として処理することで複雑な問題解決にも対応していますが、人の気持ちを察したり共感するといった曖昧なことはできません。
感情や人間関係は文脈や表情、背景など状況によって逐一変化するもの。人の感情や気持ちを察し、それに適切に対応することは、まだ人間でないと難しいでしょう。
AI(人工知能)の活用事例
この章では代表的な活用事例として、業界別に以下の5つをそれぞれご紹介します。
- 医療業界
- 製造業界
- 自動車業界
- 物流業界
- 農業業界
医療業界
医療現場における診断支援システムは、医師の診断を補助し、病気の早期発見や治療法の選択肢を提供します。
また医療画像の解析にもAIが活用されています。たとえばX線やMRIなどの画像から異常検出、またがんの早期発見においても役立てられているのが現状です。
さらに患者の健康データを分析することで、予防措置や治療計画の最適化にも重宝しています。
製造業界
製造業界では多くの現場にて自律AIロボットが導入されているため、人件費を省きながら工場稼働率アップを実現。また画像認識技術を使うことによって、不良品チェックにかかる人員の時間と工数を大幅に削減することにも成功しています。
それだけでなく欠陥部品の自動注文など、生産管理業務の自動化によって生産性を大きく向上させていることもメリットです。
自動車業界
主に自動運転技術や車両の性能向上、顧客サービスの向上などに活用されています。自動運転では車中につけられたセンサーで周囲を読み取り、画像認識技術を応用して速度制限やハンドル制御を行います。
また近年では運転手の脈拍から眠気の予兆を検知し、注意喚起を促すシステムなども一部企業で導入されているのが現状です。
物流業界
主に「事務」「物流管理」「配達」において用いられています。事務では主に在庫管理やルート最適化、配送スケジュールの管理などです。
物流管理では物流量の自動予測システム、また管理倉庫内ではロボットの稼働によって人的な工数を削減することに成功しています。また正式な商用利用はされていませんがドローン配送も試験的に導入されており、実用化もそう遠くないとされています。
農業業界
前述で述べた自動運転技術は、農業にも反映されています。具体的には農業機器「トラクター」にも、自動運転技術が搭載されたものが登場しているのです。
その他にも「スマート農業」といって天候や気温、機器稼働や収穫の状況をデータとして管理することで、より失敗のない効率のいい生産が実現されています。さらに作業効率を向上させると同時に、環境への配慮が実現できているのもメリットです。
AIのメリット・デメリット
この章では、AIのメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット
メリットは多岐にわたりますが、大きく分けると以下のようになります。
- 高度なデータ処理能力による効率的なビジネス運用ができる
- 人間の制約を超えた長時間作業作業が実現できる
- 24時間365日体制でのサービス提供やサポート対応が実現できる
- 学習機能をもっているため、使うごとに精度を増していく
業務効率化のみならず、長時間労働への対応や24時間365日体制のサポートが可能になることで、顧客満足度の向上にも寄与しているのが特徴です。またAIは人間の脳のような学習知能をもつため、使うごとに精度を増していくこともメリットです。
デメリット
主なデメリットは以下のとおりです。
- 導入コストが高い
- 高い開発技術および人材が必要になる
- 用途によっては精度に欠ける
- 依存による人間のスキルや判断力の退化
導入の際は高い技術と人員を必要とするため、膨大なコストがかかってしまいます。また用途によりますが、精度にかけるシステムはまだまだ少なくありません。
またAIシステムへの依存によって、人間のスキルや判断力が退化してしまう点もデメリットになります。万が一何らかの原因でAIシステムが使えなくなってしまったとき、大きな損失が生じることは否めません。
AI(人工知能)の今後
現在AI技術はまだまだ発展途上であり今後はさらなる進化が加速され、できることが増えていくと予想されています。
とくに機械学習やディープラーニングの技術が進んだことで、AIの用途は飛躍的に向上しました。将来的には、より高度なタスクや問題に対応するAIが登場することは間違いないでしょう。
人間にしかできないこと
この先、AIの発展に伴って「不要になる仕事」は今以上に増えることは確実です。たとえば事務作業やライン作業、運転手などのようなパターン化された作業などが挙げられます。
現時点で人間にしかできないことは、感情や直感を含む高度な判断やコミュニケーション、倫理的・道徳的な判断などです。これらの能力はAIが模倣することはできても、完全に再現することは難しいと考えられています。
絵や文章、プログラムコードを0から生成したり小説や音楽を作るクリエイティブなものまで登場していますが、生活やビジネスに実用されるのはまだまだ先になる見込みです。
AIができることまとめ
現時点でAIができることは、大きく分けると
- 画像認識
- 音声認識
- 自然言語処理
- データ検索や共通点抽出
の4つです。
これらの技術の組み合わせ、および表現の創意工夫によって医療や製造、自動運転などさまざまなシーンに応用させています。まったく新しいコンテンツやイノベーションの創作、また人の感情の読み取りや共感はまだ研究段階で商品化に至ってはいません。
とはいえ上記はあくまで「今のところは」の話です。近年のIT技術の進化は目まぐるしいことから、私たちの創造を超えるイノベーションが生まれる可能性は十分にあるでしょう。
「AIには真似できないこと」すなわち「人間だけができること」を常に見極め、そのスキルを継続的に磨いていくのが賢明といえます。
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