2016年頃からディープランニングを応用したシステムがメディアで頻繁に取り上げられるようになりました。人間とコンピューターがボードゲームで対戦するコンテンツは、その代表格と言えるでしょう。ディープランニングは、既存のパターンを考慮した上で、相手の戦略を読むことに特化しています。そのため、ボードゲームの攻略だけでなく、経営戦略にも有効です。今回は、ディープランニングの事業活用例を紹介します。
日本国内におけるディープランニングの活用事例
ディープランニングは、多種多様な分野での活用が期待されています。日本国内においても、事業運営に取り入れている企業が幾つか存在しています。そこで産業活用事例を3つ厳選しました。先ず1つ目に紹介する事例は、みずほ証券での活用です。2016年11月、みずほ証券は、ディープランニングの技術を取り入れた株式売買システムの運用をスタートさせました。こちらのシステムは、株式に付随する膨大なデータをディープランニングが学習し、株価の変動を予測します。
前述した通り、ディープランニングは、学習データに基づいて現状を把握・分析することが得意です。株価の変動に関与する因子と共に、予測に用いる多様な指標を迅速かつ的確にチェックできます。通常、人間が株価を予測する場合、多大な時間を費やさなければなりません。その上、判断ミスが起こるリスクをはらんでいます。しかし、ディープランニングの応用に伴い、コストの大幅な削減を望めます。証券会社や投資家が着実に利益を得られる可能性が高まるでしょう。そのため、ディープランニングを活用し、株式の自動売買システムの開発に着手する会社やヘッジファンドは徐々に増加しています。
2番目に紹介する事例は、福岡市に活動拠点を置くトライアルホールディングスでの活用です。こちらの企業は、全国各地にスーパーマーケットとドラッグストアを出店している小売企業です。1980年代に創業した当初からIT分野に着目し、最先端技術を小売業や流通業に取り入れようとしていました。いち早くディープランニングを導入し、精度の高い欠陥認識システムを構築しています。ディープランニングの画像認識機能は、正確に欠陥商品を探知・排除すると共に、自動発注の効率アップに貢献しています。従来の作業の手間を省いたことによって、顧客への利益還元に成功しました。
3番目に紹介するのは、ベンチャー企業・クエリーアイが文章作成ツールに試用した事例です。クエリーアイは、ディープランニングを用い、独自開発した人工知能・零に福沢諭吉と新渡戸稲造の著書を学習させました。人工知能が2つの書物から人智を学んで熟考した結果、書籍・賢人降臨を書き下ろしています。人工知能による執筆にも関わらず、校正が全く行われていない珍しいケースとして注目を集めています。今後、ディープランニングを文章作成に利用する際、有用な資料となるでしょう。
ディープランニングを利用する際に知っておくべき法律
ディープランニングは、人間の脳を模したシステムです。従って、学習しなければ、いつまでも未熟な状態であり、産業に有効活用することが難しいです。先ず、大量のデータを学ばせて、望ましいモデルを生成しなければなりません。学習の過程においては、文章や動画など、著作物を利用する場面が多々あります。日本の著作権法第47の7において、情報解析を目的とする場合には、著者・作者の許可を得ずに記録・翻案することが許されています。情報解析に機械学習も含まれているため、ディープランニングの学びを進める際、自由に著作物を利用可能です。
尚、販売や有償提供が目的となっていたとしても、著作物の記録など作業は制限されません。このような法律は、非常に珍しく、異例です。諸外国では、同様の趣旨の条文は非営利目的の団体や教育機関の活動、研究機関の開発のみ適用されています。第三者が無断で著作物を用いた折には、著作権侵害になり、大きなトラブルに発展しかねません。ゆえに、ディープランニングの開発に携わる人々にとって、日本はうってつけの環境なのです。
人間が倫理観を持って管理しなければならない
ディープランニングは、大きな可能性を秘めています。常人では成し遂げられないミッションを容易く攻略できます。しかし、一般社会で求められるモラルや倫理観が欠如していて、全知全能ではありません。人間のような場の空気を読み、他者の気持ちに忖度することが難しいです。人間では想定できない曲論を提示する場合もあるでしょう。そのため、利用・管理する側が適宜メンテナンスする必要があります。あくまでディープランニングは人の生活を豊かにする上での補助的なツールです。人間が主体となって人工知能を利用し、その責任を持たなければなりません。優れた性能を過信した折には、取り返しのつかない事態に陥りかねないため注意しましょう。
ディープランニングが事業拡大のきっかけに
IT技術の進歩に伴い、先進国ではディープランニングの開発が急ピッチで進められています。幅広い分野でディープランニングが導入され、収益をアップさせるチャンスが見出されています。特に、日本国内では、著作権法の制限が厳しくないため、ディープランニングの活用によって画期的な商品・サービスを開発する機会が豊富です。興味があるエンジニアは、先ず人工知能を扱う上での倫理観や法律を習得しましょう。